新幹線vs.航空「30年戦争」の勝者はどちらか 国鉄民営化でサービス競争が激化した

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九州新幹線開通では、思わぬ航空路線にも影響が出た。飛行機1機のみで運航している地域航空会社の天草エアライン(熊本県)が運航する福岡―天草線である。ほかの離島と大きく異なり、天草の島々は「天草五橋」で結ばれており、時間はかかるが福岡から陸路でも行ける場所だ。以前は在来線特急に乗って熊本駅からバスを使うと4時間近くかかっていたのが、九州新幹線の開業によって博多―熊本間が最速33分で結ばれたことにより、約3時間で博多駅から天草へ移動することができるようになった。

もちろん所要時間だけをみれば、1日3往復を運航している天草エアラインを使えばわずか35分で移動可能だが、料金での差は圧倒的。天草―福岡間は新幹線とバスの組み合わせが6850円、天草エアラインは1万3200円と陸上ルートの倍もかかる。

そこで天草エアラインが考えたのが、「観光」での集客に力を入れること。天草には観光スポットが数多くあり、グルメも堪能できる。地域の交通手段にとどまらず、観光の交通手段としての価値を高めていく戦略だ。機体は親子イルカを描いたかわいらしいデザインにしたほか、観光での集客のためにパッケージツアーの商品を強化。往復航空券に地元グルメのランチをつけたプランを8500円で売り出すなどした結果、観光客の取り込みに成功した。

ここ数年、新幹線開業後も減便や機材の小型化(ダウンサイジング)はあっても航空便が運休にならないのは、乗り継ぎ需要があることが大きい。特に羽田発着路線にその傾向が強い。

乗り継ぎが利用を後押し

乗り継ぎは、国内線・国際線双方に一定の需要がある。地方空港から羽田に到着した乗客は必ずしも東京が目的地ではなく、羽田空港から国際線に乗り継いで海外へ行く人、また国内線に乗り継いで地方空港から直行便が就航していない都市へ乗り継ぐ人も多い。特にこの5年で羽田空港発着の国際線が拡充し、国内線と国際線との乗り継ぎが増えたことも追い風となっている。乗り継ぎ客は新幹線で東京や品川で乗り換えるよりは、飛行機同士を乗り継いだほうが楽だ。

ANA、JALでは、国際線乗り継ぎの国内線を片道5000円で利用できるなど運賃面のメリットも多く、インバウンド(訪日旅行客)増加にも寄与している。その象徴が羽田―中部線。新幹線を使えば東京―名古屋間は1時間40分程度だが、羽田空港からの国際線増加でJALが2往復、ANAが1往復を運航しており、安定した搭乗率を記録している。

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