「夜型人間」だから蓄えられる種類の知識ある 朝より夜に向く知的な取り組みとは

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非常に緩い夜の時間が刺激的な時間になる。もちろん本も読むし、スポーツは必ず見ます。高校野球の期間中は録画したのを全試合、毎晩見ます。すると勝負に生きる心地よさというか、球児たちのエネルギー、試合への集中力や勝負に挑む気迫を夜の間に仕入れて、次の日のエネルギーにしているような気がする。夜のうちに自分の中に栄養をためて、次の一日のための土壌を作る感じですかね。

夜は深さの次元をもたらしてくれる時間

──「夜の時間は心の地下室」と。

(124)夜型人間のための知的生産術 (ポプラ新書)
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人それぞれが心の内に地下室を持っていて、そこから表に出て吐き出し合って、初めて公の祝祭空間が生まれる。その前提として、それぞれが地下室で養ったパワーがないと面白くない。

学生に聞くと、案外みんな夜はテレビを見ていない。SNSのおしゃべり空間がグルグル回っている。それが生活の大半になってしまうと、一人の時間に積み上げた教養や思索、ため込んだマニア的知見とかが枯渇して、薄っぺらい人間になってしまう気がするんですよね。夜は豊かで濃い心の地下室を持つのに最適な時間なのに、ずっとSNSで友達としゃべっているのは、表通りではしゃぐだけの一日に終始するようなもの。一人の時間に何をするかが、その人の人格的な魅力や奥行きになると思う。

──朝型知的生産のキーワードを「生産性・効率性」とするならば、夜型知的生産は何と形容できるでしょう?

夜の濃密な時間が私たちの心の土壌を育てる。まずは夜が濃密なんだということに気づいてほしい。濃密さが蜜のように垂れてきて、渇いた心の土壌を潤す。そういう心を土に見立てて、心を森にするというのが、私の夜型知的生産のイメージなんですね。

読書についても、ゲーテもニーチェもドストエフスキーも、みんなかなりの巨木なんですね。一人の作家だけで森になるくらいに。心の中に木を生やして森にする、それなしでは心が砂漠化してしまう。昼間の情報だけ、あるいは友達とのおしゃべりだけではカラッカラになっていく感じがする。そこには深さがないから。夜は深さの次元をもたらしてくれる時間。それを深めてくれる賢人たちとは夜のほうが出会いやすい。知的に過ごせる夜の時間をみすみす放棄するのは、もったいないことです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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