山手線新型「E235系」量産車は何が違うのか 年度内に15編成導入、新たな東京の顔に

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従来、透明フィルムは屋外でステンレスに貼った場合、短期間で劣化してしまっていたが、今回採用されたスリーエムジャパンの透明フィルムは表面に特殊加工を施し、耐候性などをアップ。屋外で風雨にさらされる鉄道車両にも使用が可能になった。E235系の場合は黄緑色のラインの端部がグラデーションのドットとなっているため、ステンレスの輝きを生かしたデザインが可能になった。

外観同様に車内のデザインも量産先行車とほぼ同様だが、実は細かな部分に改良が施されている。その一つは荷棚の高さだ。量産先行車の荷棚の高さは標準が1678㎜、先頭車と優先席部分が5cm低い1628mmだったが、今回の量産車では従来車の改造車両である10号車を除いて全体を1628mmに統一した。これまで荷棚を使いづらかった身長の低い人には朗報といえる改良点だ。

潔癖症でも大丈夫?新しい手すり

また、手すりの質感が変わった点もポイントだ。従来、車内の手すりは光沢のあるつるつるしたパイプだったが、今回のE235系量産車では座席付近に設置された縦方向の手すりを、表面に微細な凹凸のあるさらさらとした質感の仕上げに変えた。JR東日本によると、狙いは「清潔感を保つこと」。電車の手すりというとちょっとヌメっとしている……としてつかまるのを避ける人も見られるが、新しい手すりなら利用に抵抗がなくなるかもしれない。ドア横の手すりは従来と同様のタイプなので、新しい手すりの感触を試すなら座席付近だ。

このほか、全車に設けられたフリースペースと優先席部分は床面を赤系で色分けし、他の部分とはっきり見分けがつくように。量産先行車でもフリースペースはピンク色、優先席は薄い赤で色分けしていたが、量産車では優先席部分を濃い赤に変更し、より明確に違いがわかるようになった。

2015年11月の量産先行車デビュー時には運行開始直後からトラブルが発生し、翌年3月まで改修のため営業運転を見合わせるなどの問題に見舞われたE235系だが、今回の量産車については「問題なく初日の運行を終えた」(JR東日本)。ネット上では乗り合わせた利用者によるとみられる故障発生の情報があったが、JR東日本は「特にそういった件は把握していない」という。

これからの東京の大動脈を担う顔として、安定した運行が行われることを期待したい。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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