「口ぐせが現実を変える」が科学的に正しい訳 「記憶をマネジメントする」ための2つのコツ

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学生たちは5分ほどのテストを終えたのち、廊下の先にある部屋にいって次の実験の担当者と話すよう指示を受けました。しかし彼らが部屋の前までいくと、その担当者はほかの学生の相手をするのに忙しく、話ができるような状況ではありませんでした(この話し込んでいる担当者と学生も仕込まれたサクラです)。

この状況で、1つ目の無礼な単語が含まれたテストを行った学生は、平均5分程度で2人の会話をさえぎったのに対して、もうひとつのお行儀がいい単語の入ったテストを行った学生の82%という圧倒的多数が、10分経っても会話をさえぎろうとしなかったのです。

望ましい結果を言葉に出し記憶に植え付ける

このように、言葉、厳密には言葉によって影響された「記憶」によって、私たちの思考や行動は変わります。

「記憶」は、私たち人間のほんの一部の要素だと思っている人も多いかもしれませんが、この記憶こそが、私たちの行動や思考のすべてをつかさどっているといっても過言ではないものです。これまでの経験や知識を積み重ねるなかで培ってきた記憶が、さまざまに結びつくことで、その人独自の、思考力、発想力、創造力、意思決定力、価値観、信念などが形づくられるからです。

記憶という要素で、自分という人間がプログラミングされていると考えてみるといいかもしれません。

ということは、このプログラミングを自分の手で行えば、自分自身をつくることが可能ということです。“記憶にコントロールされる”のではなく、あなたが主体的に“記憶をマネジメント”することで、人生を能動的に変えていくことができるのです。

そのために有効な方法のひとつが、先ほどの「プライミング効果」です。新しい仕事に取り組む、資格を取るなど、チャレンジしたいことはあっても「どうせできない」と諦めてしまいがちな人は、「○○できるようになりたい」「きっと○○できる」と何度も願い言葉に出してみましょう。

最初はただ言葉に出しているだけでも、その言葉による記憶が徐々にプログラムに影響を与えます。そうして、あなたの望む方向へ進む手助けをしてくれるのです。

次ページ自分の行動と記憶を第三者的に観察する「メタ認知」
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