ネット現金出品は「マストドン」でヤバくなる メルカリやヤフオクは締め出しが容易だが…

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マストドンは急速にユーザーを増やしている分散型SNSだ

クラウド型のサービスであれば、どんなものであれプラットフォームを預かる事業者が、参加する利用者の投稿に対して、内容の是非を評価することは(コスト次第で)可能だ。

しかし、今、まさに広がりつつあるマストドン、あるいはそれに類する分散型システムの場合、管理しきれずに無法地帯となってしまう可能性もある。

マストドンの特徴は、インスタンスと呼ばれるサービス提供の拠点を個人でも設立できること。各インスタンスは相互接続により緩やかに連携している。リモートフォローという手法を経由し、異なるインスタンスの書き込みが相互に交換されることも少なくない。

問題はID管理がインスタンスごとに行われること。複数のインスタンスにまたがってIDを作成し、相互にフォローしあう関係を多重に構築できてしまう。問題のある書き込みをそのうちの一カ所に投稿するだけでそれを複数のコミュニティに流していくことはできるだろう。

分散型ゆえに「一網打尽」はできない

そうした中で小規模なコミュニティの主であるインスタンスの運営者は、企業レベルではないかぎり、そのインスタンスで書かれている内容をチェック、削除する態勢を整えることはできない。それどころか悪意を持った運営者がインスタンスを立ち上げることもできるわけだ。

マストドンは、誰にも支配されない自由が、爆発的なID数の伸びを支えている。しかしながら、自由にはリスクが伴う。今回問題となった「クレジットカードのショッピング枠を現金化するビジネス」のように、厳密には犯罪といえないグレーゾーンを運営者が自主的に取り締まらねばならない現行システムでは対応しきれないだろう。対応しようと努力したとしても、投稿の妥当性を問う評価はインスタンスごとに行う必要が出てくる。「一網打尽」は極めて難しい。

マストドンの隆盛は、将来的なリスクを拡大しないのか。前へと進むと同時に、足元もつねに見すえる必要がある。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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