生命保険業界が「顧客本位」とはいえない理由 金融庁長官の懸念を真剣に受け止めるべきだ

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2 営業体制を改革する

筆者が十数社の保険を扱う代理店で勤務していた頃、ある保険会社が、同じ内容で他社より割高な商品の販売を推奨する際、強調していたのは「業界最高水準の代理店手数料」でした。

保険販売にかかわる者が、顧客と「利益相反」の関係であることがわかる例だと思います。筆者が営業の仕事を辞めたのは、この点を顧客に追及されると言い逃れできない、と考えたからです。

保険会社が営業担当者を雇用するのであれば、固定給の終身雇用が基本でしょう。新規契約獲得に収入が左右される報酬体系では、人材の大半が離職していくことは、歴史が証明しています。それは顧客が望んでいることでしょうか。

代理店にしても、保険会社から手数料を受け取るのではなく、顧客から相談料やサービス料を受け取るのが筋でしょう。簡単なことではないとしても、「誰の代理をしたいのか? 保険会社からの報酬に依存する以上、保険会社本位になるのではないか?」と考えると、答えは明らかなのではないでしょうか。

保険が役に立っている「実態」を知りたい

3 保険金・給付金の「支払い実績」「見込み」を開示する

たとえば「がん保険」への加入が勧められる際には、罹患率の高さや、300万円ほどの実費がかかる治療例などの不安材料が並べられます。CM等で語られる著名人の体験談にも大きなインパクトがあります。

だからこそ、歓迎せざる事態が訪れる「確率」や保険が役に立っている「実態」(あるいは見込み)を知りたいと思います。不安が募った状態で契約に関する正しい判断をするのは難しいからです。

降水確率から、外出時の準備を考えるようなことができるといいと思うのです。「被害に遭うと大変です」といったことばかりではなく、「X%の確率で被害が出ます」と教えてほしいのです。

さらに「発売以来、(以下、仮の数字ですが)30歳で加入した人の100人に3人が、50歳になるまでに『がん』の給付金を受け取っています。再発に備える給付金は、50歳までに1000人に5人くらい支払われる見込みです」といった情報があると、商品の利用価値について納得感も高まるでしょう。

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