新聞の世論調査は中立な「報道」とはいえない 「共謀罪」「テロ等準備罪」? 誘導は明らかだ

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法案に賛成の立場を取る読売新聞は、記事の中心を北朝鮮問題に当てており、法案については「賛成は58%、反対は25%」と簡単に触れているだけだった(4月17日付朝刊)。毎日新聞は3月に実施した調査結果の記事があるが(3月14日付朝刊)、結果は「反対は41%で、賛成の30%を上回った」としている。

数字だけを見ると、賛成は産経新聞の57.2%が最高で、最も低い毎日の30%とは倍近い開きがある。ここまで違うと世論調査自体を疑ってかかるしかない。

法案の呼称、説明や質問の仕方で回答を誘導

質問の仕方や質問の表現で調査結果が大きく違ってくることは、世論調査の研究者の間ではよく知られている。質問項目について十分な情報を持たず理解もしていない回答者は、質問のされ方によって回答が簡単に左右にぶれるのである。したがって実施する側が何らかの意図を持つ場合、自分の都合のいいように結果を操作することが可能になる。今回の場合も各新聞社の質問の仕方に意図的としかいいようのない「工夫」が凝らされている。

まず、「組織犯罪処罰法改正案」というわかりにくい名称の法案についてマスコミがいくら報道しても、多くの国民がその内容を積極的に把握しようとはしないだろう。したがって、法案の意味や問題点を理解することは難しい。そのため、世論調査では法案の内容をどう説明するかが回答を大きく左右することは言うまでもない。

今回の場合、産経新聞は質問で「政府は従来の共謀罪の構成要件を厳格化するなどした『テロ等準備罪』を設ける法案を今国会に提出した」と紹介したうえで賛否を問うている。また読売新聞も「これまで検討されていた『共謀罪』の要件を厳しくし、テロ組織や組織的な犯罪集団が、殺人などの重大犯罪を計画・準備した段階で罪に問えるようにする『テロ準備罪法案』」という説明となっている。共に法案を肯定的に紹介している。その結果「賛成」が多くなっているのである。

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