失ったのに強い!熊本の被災農家は前向きだ

なすびのおかげでギアチェンジができた

ナス農家の嶋村兼次さんの畑は、震災で甚大な被害を受けた(筆者撮影)

熊本地震から1年が経った。震源地からわずか約2キロメートルの場所にある筆者の実家も被災し、この1年は何度も熊本を訪れた。至る所で見られたブルーシートの数も減り、更地になった場所も増え、着実に一歩ずつ前へ進む熊本の景色を見てきた。

一方、人間の心はどうだろう。これまでに4000回以上もの地震が観測され、熊本の人たちの精神的な負担は計り知れない。震災後、被災した人たちはどんな思いで歩んできたのか、現在どんな思いでいるのだろうか、被災者の今を取材した。

震災から一夜、真っ先に向かった畑は

熊本地震の前震から1年目の4月14日。筆者は熊本へ向かい、空港から益城町へ直行した。震度7を観測し、甚大な被害を受けた町だ。

訪ねたのは、茄子農家の嶋村兼次さん(64)の畑。嶋村さんご夫婦が明るい笑顔で迎えてくれ、ビニールハウスへと案内してくれた。幅30m、長さ90mの大きなビニールハウスの中は、モーツァルトの曲が大音量で流れていた。「音楽を聞くと、なすびさんがリラックスして喜ぶとですよ」と嬉しそうに話す嶋村さん。ハウスの中は穏やかで澄んだ空気に包まれ、たわわに実った茄子がキラキラと輝いて見えた。

熊本県は農業産出額が全国6番目の農業県。熊本地震による熊本県の農業関係被害額は約1305億円で過去最大となった。嶋村さんの畑の被害総額は、小屋が1199万円(このうち自己負担額283万円)、茄子が30万円(全額自己負担)、ポンプ修理が5万円(全額自己負担)に上った。

震災直後、根がむき出しになったナス畑の様子(嶋村さん撮影)

嶋村さんの自宅は地震で全壊し、現在は夫妻で仮設住宅に住んでいる。最初の地震があった夜は、ダムが欠壊する恐れがあったため、高台の墓地で一夜を過ごした。夜が明けて真っ先に向かったのは、畑だった。油が入ったタンクが倒れかけ、畑は地割れして水分を失い、茄子の根はむき出しに。嶋村さんがこれまでで一番愕然とした瞬間が、この状況を見た時だったという。

しかし落ち込んでいる場合ではない。嶋村さんは、すぐに復旧作業に取りかかり、茄子の収穫を始めたという。

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