「糖質制限」は一過性のブームで終わらない すでに社会的な革命を起こしている

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──糖質制限食の有効性は「誤りだった」と覆ることはもうない?

ないです。米国では十分なエビデンスと論文が蓄積され、学問的に決着がついている。日本糖尿病学会ではまだまだ反対派もいます。だけど学会の理事長自らカロリーの40%程度を糖質にする糖質制限食を実践し、15年4月からは東京大学医学部附属病院でも糖質40%の糖質制限食を供給している。米国は論理的に信頼度が極めて高いとなれば推奨対象をコロッと変える。日本の場合その辺ウエット。カロリー制限食なんてエビデンスはゼロなんだけど、おっちゃんたちのコンセンサスが推奨の根拠になっている。医者はほとんど栄養学を勉強しとらんし、食事療法を丸投げされる栄養士には「脳はブドウ糖しか使えない」などの大間違いをいまだに信じてる人も多い。

人類700万年の先祖が食べていた本来の食生活

──そもそも、糖質制限食とは。

江部 康二(えべ こうじ)/1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京大研究所を経て、78年に医局長として高雄病院勤務。2000年に理事長就任。01年から糖尿病治療研究に本格的に取り組み、糖質制限食の体系確立。05年『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』で糖質制限食を初めて全国に紹介。日本糖質制限医療推進協会理事長。著書多数(撮影:ヒラオカスタジオ)

ご飯やパン、麵類などの摂取糖質量を抑え、その分をタンパク質と脂質で補って、必要なカロリーはしっかり確保する。血糖値を直接上げるのは糖質だけ。食後血糖値が上がると血管の内皮を傷つけ動脈硬化、糖尿病の合併症につながっていく。糖質過剰は“肥満ホルモン”インスリンの大量分泌を招いて代謝を乱し、血管をさびやすくする酸化ストレスが増す。食後血糖値上昇がない唯一の食事療法が糖質制限食です。

糖質制限食は人類700万年の先祖が食べていた本来の食生活に戻すということ。狩猟採集生活をしながら消化管、栄養代謝制御のシステムを作りあげたわれわれの体はもともと糖質制限食に適合してる。穀物栽培が始まった1万年前から、カロリーの60%が糖質という食生活へ激変した。この矛盾が現代の生活習慣病の根本原因。だから糖質制限食は基本的にありとあらゆる生活習慣病の予防・治療になるわけ。ちなみに高雄病院のスーパー糖質制限食の給食メニューは、平均して糖質12%、タンパク質32%、脂肪が56%です。

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