中国人留学生を優遇し、日本人を追い込む矛盾 これでいいのか!日本の「グローバル教育」

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日本には見向きもしない、富裕層の中国人

話を中国人留学生に戻す。

2008年、日本政府の「留学生30万人計画」が発表されて、その内容が明らかになると、中国では一気に日本留学ブームが起きた。「こんなおいしい話はない」と、学生たちが日本大使館に殺到し、2009年4月の留学ビザ取得率は前年同期より12%もアップした。日本留学斡旋所も連日大盛況で、日本語学校は学生数が2倍になったところも出た。

独立行政法人日本学生支援機構によると、現在、日本には約14万人の留学生がおり、そのうち中国人は約9万人で、じつに全体の70%近くを占めている。次いで韓国(約5%)、台湾(約4%)、ベトナム(約2.5%)の順で、欧米圏からの留学生はわずかしかいない。つまり、「留学生30万人計画」といっても、その実態はアジア人留学生ばかり、とくに中国人のための留学制度と言ってもいいのだ。

私の娘は、ベイツカレッジを卒業後ジョンズホプキンズ大学のSAIS大学院に進学し、米中関係を専攻して中国の南京大学に留学した、それで私も何度か南京に行ったが、そこで出会った中国人学生たちは、みなアメリカへの留学を希望していた。日本へ留学したいという学生はほぼいなかった。

中国で人気の留学先はアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアという英語圏が中心。アジアでは香港とシンガポール。日本はその次で、資金力がある富裕層の子女は日本には見向きもしない。前記した都心のマッサージ店でバイトしている留学生の場合は、実家が貧しく、奨学金が出るので日本に来たが、本当はアメリカに行きたかったのである。

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