「寝不足に悩む人」が知らない眠り方の新常識 いつもどおりのリズムを崩さないのが肝要だ

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また、睡眠時間を後ろにずらして「いつもなら寝ている時間」に起きていると、成長ホルモンがまったく分泌されないこともわかっているので、「入眠は規則正しく」はぜひとも心掛けていただきたいポイントです。

「今日は徹夜確定」そんなときの夜の過ごし方

「最初の90分が、その後の睡眠の質を左右する」――このことを踏まえると、「今日は徹夜作業だ」という夜は、とりあえず90分だけ寝てしまって、そこから起きて作業を開始することが賢明といえます。

『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

この場合、睡眠量は明らかに不十分ですが、質の面では「最低条件下で最大限のメリット」を得られることになります。眠った時間の90分ほどは、その後の効率アップで元が取れるはずです。

一方、眠気をこらえて明け方5時ころまで資料をつくり、「せめて7時まで2時間寝よう」というのもよくある話ですが、この場合脳は興奮していて、明け方になると体温も上昇を開始するので眠りづらいでしょう。結局明け方まで仕事をして眠ったとしても「ベッドに入ってうとうとしたけれど、寝た気がしない」という、量が少ないうえに質が悪い状態で出社することになるのです。

この「寝始め90分」の効果と睡眠の質の関係を知っているか知らないかで、翌日のパフォーマンスへの悪影響を最小限にとどめられるか、最悪の結果に終わるかが決まるといえそうです。

西野 精治 スタンフォード大学医学部精神科教授、睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長

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にしの せいじ / Seiji Nishino

医師、医学博士、日本睡眠学会専門医。大阪医科大学卒業。1985年大阪医科大学大学院より新技術開発事業団早石修プロジェクト出向。1987年スタンフォード大学留学。2019年ブレインスリープ創業、2021最高研究顧問就任。2022年NOBシフトワーク研究会設立、会長就任。著書に「睡眠負債」の実態と対策を明らかにしベストセラーとなった『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)、『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP新書)、『睡眠障害』(角川新書)、『スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術』(文春新書)、『スタンフォードの眠れる教室』(幻冬舎)、共著に『最高のリターンをもたらす超・睡眠術』(大和書房)等。

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