3月29日、英国がEU(欧州連合)に離脱の意思を通知した。英国の通知に先立つ25日、英国を除くEU27カ国は「ローマ条約」の調印60周年を祝う記念式典と特別首脳会議を開催した。
ローマ条約の調印で動きだした「欧州経済共同体(EEC)」は、「関税同盟」(1968年1月完成)、「単一市場」(1993年1月始動)、そして単一通貨「ユーロ」(1999年1月導入)という成果を上げた。参加国も、当初の6カ国から28カ国まで拡大し、19カ国が単一通貨を共有するようになった。
EUの統合は目下、深刻な危機に直面
しかし、EUの統合は目下、深刻な危機に直面している。英国の選択はEU加盟各国のポピュリスト政党を勢いづかせ、それらはEU離脱やユーロ離脱の国民投票を掲げて支持を得ようとしている。とりわけドイツとともに統合を牽引してきたフランスで、大統領選挙の第1回投票(4月23日)まで1カ月を切っても、EU懐疑主義の国民戦線・ルペン党首が根強い人気を保ち、EUに影を落としている。
3月25日の首脳会議で採択した「ローマ宣言」にも、現在のEUが「地域紛争、テロ、難民流入圧力、保護主義、社会的・経済的不均衡」という難題への「前例のない挑戦」に直面していると記され、危機意識が色濃く反映された。
ローマ宣言の最大の特徴は「基本条約に従い、同一の方向に動く」としつつ、加盟国間での「異なる速さと深さ(at different paces and intensity)」、いわゆる「マルチスピード(多速度)の欧州」のへ道が示されたことだ。
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