トランプ氏の未熟な政治交渉力、ついに露呈

得意の「セールスマン的な手法」で墓穴?

 3月24日、米共和党は、議会下院で予定していた採決直前になって医療保険制度改革(オバマケア)代替法案を撤回した。写真右はトランプ米大統領。ワシントンのホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[ワシントン 24日 ロイター] - 米共和党は24日、議会下院で予定していた採決直前になって医療保険制度改革(オバマケア)代替法案を撤回した。トランプ大統領と議会共和党指導部はぎりぎりまで採決に持っていくと主張していただけに、面目は丸つぶれとなった。

これにより、トランプ氏が重要法案を議会で可決させる能力があるのかどうか疑問が生じたばかりか、同氏がビジネスで培った交渉力を生かして「政治の淀みを一掃」し、ワシントンを改革するという約束を果たせるかどうかも雲行きが怪しくなってきた。

ホワイトハウスとしては今後、税制改革や大規模インフラ投資などを他の懸案とともに年内に進めたい意向だが、戦略を練り直す必要やライアン下院議長など議会共和党指導部が当てになるのかという点を考えざるを得なくなっている。

ウィスコンシン州の共和党員で相応の影響力を持ち、しばしばトランプ氏を批判している政治コメンテーター、チャーリー・サイクス氏はツイッターに「トランプ政権にとって最も重大な1日だ。単なる失策ではなく、驚くほどの失策と言える」と投稿した。

オバマケア代替法案の撤回に至ったことついてトランプ氏は、自身の経験不足も一因とみているようだ。「われわれは忠誠心について、また賛成票獲得の過程について多くの学んだ」と発言し、他の優先的な政策課題に取り組むと付け加えた。

トランプ氏は、自ら売り物にしてきたセールスマン的なやり方で墓穴を掘ったように見受けられる。保守強硬派に対してオバマケア代替案の賛成に回るよう猛烈に働き掛けたが、彼らの大半はなびこうとせず、逆にその過程で当初支持を得ていた穏健派に背かれる有様だった。

そこでトランプ氏は戦術を転換し、反対する保守派の取り込むをあきらめて、すべての共和党議員に支持を促す最後通告を発したものの、それもうまくいかなかった。

トランプ氏は、代替法案が成立すればオバマケアよりも医療保険が改善すると国民を説得することもできなかった。世論調査では代替法案の不人気ぶりが示され、保守派は選挙区の有権者からの反対意見が殺到しているとこぼしていた。

ハリー・リード前民主党上院院内総務の有力側近だったジム・マンリー氏はこうした状況について「選挙運動と法律制定作業は別物だということが分かる」と述べた。

トランプ氏はライアン下院議長をほとんど蚊帳の外にしたまま代替案反対派と断続的に交渉しようとしたことで、さらに事態が紛糾。そうまでして何度か譲歩案を出したが、保守派の姿勢は変わらず、かえって穏健派の怒りを招いてしまった。

一方、ペンシルベニア大学ワートン・スクールで交渉術を教えるスチュアート・ダイアモンド教授は、トランプ氏の「剛腕」が裏目に出たとの見方を示した。「こうした手法は総じて機能せず、関係性を損なった。さまざまな利害関係者が存在し、権限が分散化されている場合、強引な交渉が効果を発揮しないのは自明だ」という。

ミシガン州選出で中小企業経営者でもあるビル・ハイゼンガ下院議員は、トランプ氏はまだ統治の習熟途上にあると指摘。「政治とビジネスには似たような面があるが、まったく同じではない」と説明した。

またデニス・ハスタート元下院議長の側近だった共和党のストラテジスト、ジョン・フィーハリー氏によると、過去10年の教訓に基づけば法案策定戦略においてホワイトハウスがもっと主導権を発揮する必要があるのに、トランプ氏はオバマケア代替案に関してライアン氏のオフィスにほぼ丸投げしており、ライアン氏側が密かに法案をまとめたため、一部保守派が不信感を抱いたという。

(James Oliphant記者)

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