クスリの大図鑑 <ガン> 3人に1人はガンで死亡 “輸入新薬”多いのが課題
あなたのクスリ、合っていますか?−−自分や家族の飲んでいる薬をもっと知ることが健康や安心につながる。効き方から市場シェア、選択肢の有無、後発品との価格比較、新薬開発動向まで、主な12の病気のクスリについて掲載。
わが国の死亡原因のトップはガンである。
過去からの死亡率の推移を死因別に見てみると、明治から昭和初期まで肺炎、結核、胃腸炎などの感染性疾患による死亡者数が多かったが、これらはペニシリンの発見を皮切りに多くの抗生物質の登場によって、戦後、急速に減少していった。入れ替わりに、生活習慣病による死亡者数が上位を占めるようになった。急性疾患から慢性疾患への死亡病因の変化である。特に循環器系の機能障害である心疾患および脳血管疾患が、死亡原因の大きな割合を占める時代が、しばらくの間続く。しかし近年では、高齢者人口の増加に反して、その死亡数が減少。高血圧症や高脂血症の優れた治療薬の使用が可能になったことで、循環器由来の疾病をコントロールできるようになったことが大きな理由の一つだ。
一方、ガンによる死亡者は、増加するばかりだ。1998年には心疾患および脳血管疾患の両疾患の合計死亡数よりも、ガンによる死亡数が多くなった。厚生労働省の発表によると、2006年のガンによる死亡数は32万9198人。何と総死亡数の30・4%を占めるに至り、国民の約3分の1がガンで死亡している。このような状況は日本に限ったことではなく、先進国に共通の現象だ。
相次ぐ新薬の発売 「克服」の日は遠くない?
患者数の増加に伴って、06年度の国内ガン治療薬市場は4700億円で、前年度比8・0%増と大きく拡大している。90年代後半から相次いで発売された、抗体医薬を中心にした新薬が順調に成長したためでもある。今後も、すでに海外で実績のあるいくつもの薬剤が日本国内で上市を控えており、さらなる市場拡大は間違いない。
意外かもしれないが、抗ガン剤は「儲けが少ない」と言われていた時代が長かった。たとえば、高血圧や高脂血症の薬は、早ければ40代で発症してから亡くなるまで数十年飲み続ける。患者数も膨大だ。単価はともかく、数量的には莫大な市場性が保証されている領域である。こうした生活習慣病に比べれば、ガン患者の絶対数は少ない。さらには服用期間も短い。手術が成功すれば薬を飲まなくなることもあれば、逆に、治療のかいなく亡くなることもある。
ただ、高血圧や高脂血症は薬で一定のコントロールができるようになった今、製薬各社はあらためてガンに注目するようになっている。まさに「時が来た」といえよう。
既存薬では武田薬品工業が創製したリュープリンがトップだ。ガン細胞が増殖する際に男性・女性ホルモンが関与しているガンに使用されるホルモン製剤(効き方[1])で、前立腺ガンや閉経前乳ガンの治療に使用される。2位の前立腺ガン薬カソデックスも同様だ。このほか、代謝拮抗薬(効き方[2])、白金製剤(効き方[3])、植物アルカロイド(効き方[4])などはいずれも細胞が増殖する過程のブロックを試みる。