インド・モディ首相、ブラックマネー撲滅狙う バークレイズのチーフ・エコノミストに聞く
モディ首相率いるインド政府は2016年11月に突如500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣を廃止する通貨改革に乗り出した。一時は混乱も見られたが、現在事態は沈静化している。
3月11日に開票された地方議会選挙でも与党であるインド人民党が圧勝し、モディ首相は経済改革を一層推し進めるとみられる。インド経済の現状と今後の課題について、英バークレイズのチーフ・インド・エコノミストのシッダールタ・サニアル氏に聞いた。
ブラックマネー潰しへ高額紙幣を廃止
――昨年11月にインド政府は高額紙幣を廃止しました。国内には混乱も広がっているようですが、何が目的だったのでしょうか。
高額紙幣廃止令は誰も予想しておらず、非常に驚くべき動きだった。廃止対象は、流通している紙幣のおよそ85%に相当した。
高額紙幣廃止によって、経済は大きな打撃を受けると普通は考えられるる。都市部では大規模な資金不足も起きたが、モディ首相は旧紙幣を新紙幣に交換する50日間の交換期間を設け、最初の1週間は混乱したものの、事態は徐々に沈静化しつつある。
廃止令が出る前には、2016年度GDP(国内総生産)成長率を約7.5%と当社では見ていた。現在は約0.5%ポイント引き下げ、7.5%成長を見込んでいる。
――2017年度の成長率はどうでしょうか。
政府が先日出した2016年10~12月期の成長率は7.9%だった。非常に高い。その数字を見ると、高額紙幣廃止の影響を十分に反映していないように思える。公式データだけを見ると、高額紙幣廃止の影響をしっかり把握できていないのかもしれない。
高額紙幣廃止の影響は大きいが、同時にそれは一時的なものであるともいえる。2017年度の第2四半期(7~9月)にはペントアップ需要が戻り、第3四半期以降は特に高い成長が期待できる。
――見通しは明るい?
短期的には悪影響がある。問題は長期の影響だ。まだその答えは完全には見えていないが、高額紙幣廃止の目的は、ブラックマネーシステムを潰すことにあった。高額紙幣はこのシステムの中で循環している。現金決済中心の世界から、銀行決済、電子決済システムに移行できれば、経済活動は活性化し、納税意識も高めることができる。
さらに興味深いのは、ブラックマネーシステムの撲滅は高額紙幣の廃止だけでは実現できないことだ。インド版の付加価値税(GST)の導入を政府は検討している。クリアな銀行システムを都市部、農村部に浸透させることも考えている。したがって、過去3カ月間の高額紙幣廃止の影響だけで政策の是非を論じるのは、公平ではない。
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