シャープ出資も即効薬にならず 苦境パイオニア

シャープ出資も即効薬にならず 苦境パイオニア

低迷が続く中堅AVメーカーのパイオニア。業績回復に向け、シャープと業務・資本提携を結んだ。だが、赤字のプラズマテレビ再建という最大の課題は残されたままだ。(『週刊東洋経済』10月6日号より)

 「勝ち組」と「負け組」のタッグは成功するのか。シャープとパイオニアは9月20日、資本・業務提携を発表した。車載用AV機器や薄型テレビ、次世代DVDの分野で技術、デバイスを相互利用し、共同で製品開発に取り組む。今回の出資でシャープはパイオニア株の15%弱を保有し、筆頭株主になる。

 今年7月、業績不振にあえぐ中堅AVメーカーの日本ビクターが、ケンウッドと経営統合を見据えた資本提携を発表したばかり。そのビクターと並んで、動向が注目されていたのがパイオニアだった。同社は多額の資金をつぎ込んだプラズマテレビ事業が販売不振に陥り、過去3期連続の最終赤字。その合計額は1000億円と巨額。投資ファンドが買収に動き始めたとの情報も飛び交っていた。

 苦境にあえぐ中、シャープとの距離を急速に縮めたのは昨年後半のことだ。関係者によると、シャープの町田勝彦社長(当時、現会長)とパイオニアの須藤民彦社長が何度か顔を合わせるうちに提携構想が浮上したという。

プラズマ再建の課題

 シャープ幹部によると、資本まで踏み込んだ提携はパイオニアから提案したものだった。同社は再建に当たって、プラズマで松下電器産業、車載用AV機器でアルパインなどと、事業単位で手を組む方策もあったが、最後にはシャープとの包括的提携に傾いた。須藤社長は「業界を見渡すと、事業単位の提携でうまくいかないケースが多い。じゃあ、会社対会社となるとシャープが最も大きなシナジーが期待できる」と話す。

 両社は2000年にDVD録画再生機の共同開発に着手した経緯がある。だが、現場の技術者は重要な技術を隠し合い、結果的には失敗に終わった。「前回はうまくいかなかったが、今回は絶対に業務提携を実りのあるものにする。その決意を資本提携で示した」(須藤社長)。 

 もっとも、市場の評価は冷ややかだ。提携発表後もパイオニアの株価は上向く気配がない。金融関係者はこう指摘する。「シャープは得をする。が、パイオニアの根本的な改善策にはならない」。

 提携を通じたシャープの最大の狙いは、車載分野への本格参入だ。急速に進む自動車の電子化は、電機メーカーにとって絶好のビジネスチャンス。だが、シャープの自動車関連ビジネスは現状でアルパインのカーナビなどに液晶を供給するぐらい。「うちには撮像系半導体など液晶以外にも自動車に使えるデバイスはある。だが、取引実績がないのでニーズを読み切れていない」(シャープ首脳)。車載分野に精通したパイオニアは、絶好の販路だ。また、テレビにはパイオニアの音響技術を取り込める。

 パイオニアにも一定のメリットはある。デジタル家電の開発費負担が軽減され、最先端液晶の調達でカーナビの強化ができるからだ。しかし、低迷の元凶であるプラズマテレビの不振は手つかずのまま。足元は、カーエレ事業が稼ぎ出す利益を、ホームエレクトロニクス事業が食い潰している。この構図が劇的に改善するわけではない。

 須藤社長はテレビ事業について、自社のプラズマで展開していない40インチ以下でシャープ製パネルを使った液晶テレビを発売する方針を明らかにした。ただ、40インチ以下はボリュームゾーンのため、競争が激しく大手でも利益確保に苦しんでいるのが実情。仮に販売を増やせても、シャープの液晶工場が潤う効用のほうが大きいだろう。

 「勝ち組」と組んで浮上を狙うパイオニアは、いくつかの活路を見いだした。しかし、「負け組」を脱却するには、シャープとの相乗効果が見いだせないプラズマを立て直す必要がある。

(書き手:中島順一郎、渡辺清治 撮影:吉野純治)

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