なぜ日本の駅前広場は「噴水だらけ」なのか 公的空間のまったく新しい利用法とは?
なぜ日本の「広場」は「交通」を最優先にするのか
――ヨーロッパでは公共空間として「広場」が重要な位置を占めていますが、その概念が日本の「広場」とは少し異なっているのではないかと思われます。西洋の広場の発祥は、古代ギリシャの政治広場「アゴラ」までさかのぼりますが、その後も広場文化は発展し、用途に応じて「市場広場」「軍事広場」「宗教広場」「政治広場」「交通広場」などが生まれてきました。西洋において広場は、政治の中心であり、経済の中心であり、宗教的なよりどころ、エンターテインメントの場でもあるのです。
馬場:大学の時に初めて、「世界一美しい広場」といわれるベネチアのサン・マルコ広場に行って驚いたんですが、広大な広場を取り囲む建物の回廊部分にカフェやレストラン、ショップが立ち並んでいて、なかには店頭にテーブルやいすを並べて公共の広場空間にまではみ出しているお店もあるんです。日本の公園なんかとはまるで違う。その衝撃が、「日本の公共空間を変えたい」と考えるようになる原点になりました。
野尻:そういう意味での「広場」の概念を語れる日本人は、ほとんどいないんじゃないでしょうかね。
稲本:なにしろ日本の広場を取り囲んでいるのは、お店じゃなくて車道ですしね。
木下:なぜか日本の自治体が「広場」を作ろうとすると、必ず交通結束点としての仕組みを入れようとするんです。バスやタクシーの乗り入れを考え、道路と鉄道をどう接続するかに意識が先にいってしまう。そういう意味では、日本では広場といえば、ほぼ「交通広場」のことです。政治拠点や経済拠点としての広場を作ろうとは誰も想像もしていませんね。
馬場:日本には本来の「広場」って存在していたことってあるのかな?
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