なぜ日本の駅前広場は「噴水だらけ」なのか 公的空間のまったく新しい利用法とは?

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東京・恵比寿は「住んでみたい街」の常連だが、駅前広場にはほかの駅前と同じように噴水が。維持管理費はバカにならない。今のニーズにあった広場の活用の仕方があるはずだ(写真提供:パブリックアライアンス事務局)
国や地方公共団体が約570兆円もの膨大な「公的不動産」を持つことをご存じだろうか。一等地の不動産も多いのに、日本は欧米に比べ、民間の力を利用した公的不動産活用で大きく遅れている。
ではどうすればいいのか。経営と街づくりの視点から鋭く切り込む木下斉(一般社団法人公民連携事業機構)、「共通価値経営」を標榜する野尻佳孝(テイクアンドギヴ・ニーズ会長)、リノベーションなどで優れた実績を誇る馬場正尊(オープン・エー/東京R不動産)の「3人の経営者」が、ホスト兼パネリストとして毎回ゲストを迎え「新しい日本の公共不動産のあり方」をビジネス視点で考えるのが「パブリック・アライアンス・トーク」だ。
第2回のゲストは外食大手・ゼットン会長の稲本健一氏。横浜マリンタワーや徳川園など公共施設開発の先駆者である同氏を迎え、4人で「広場」や「公園」を考える。4人の視点は「駅前広場」や「噴水」へ。私たちが毎日さほど気にもせずに通り過ぎる空間に、実は日本特有の大きな問題点が潜んでいることが浮き彫りになる。

なぜ日本の「広場」は「交通」を最優先にするのか

――ヨーロッパでは公共空間として「広場」が重要な位置を占めていますが、その概念が日本の「広場」とは少し異なっているのではないかと思われます。西洋の広場の発祥は、古代ギリシャの政治広場「アゴラ」までさかのぼりますが、その後も広場文化は発展し、用途に応じて「市場広場」「軍事広場」「宗教広場」「政治広場」「交通広場」などが生まれてきました。西洋において広場は、政治の中心であり、経済の中心であり、宗教的なよりどころ、エンターテインメントの場でもあるのです。

「日本の広場は、道路のことを考えすぎ」。左から野尻、木下、馬場、稲本の各氏は公的空間としての広場の問題点を次々と明らかにする(写真提供:パブリックアライアンス事務局、各氏の個別写真も同様)

馬場:大学の時に初めて、「世界一美しい広場」といわれるベネチアのサン・マルコ広場に行って驚いたんですが、広大な広場を取り囲む建物の回廊部分にカフェやレストラン、ショップが立ち並んでいて、なかには店頭にテーブルやいすを並べて公共の広場空間にまではみ出しているお店もあるんです。日本の公園なんかとはまるで違う。その衝撃が、「日本の公共空間を変えたい」と考えるようになる原点になりました。

野尻:そういう意味での「広場」の概念を語れる日本人は、ほとんどいないんじゃないでしょうかね。

稲本:なにしろ日本の広場を取り囲んでいるのは、お店じゃなくて車道ですしね。

木下:なぜか日本の自治体が「広場」を作ろうとすると、必ず交通結束点としての仕組みを入れようとするんです。バスやタクシーの乗り入れを考え、道路と鉄道をどう接続するかに意識が先にいってしまう。そういう意味では、日本では広場といえば、ほぼ「交通広場」のことです。政治拠点や経済拠点としての広場を作ろうとは誰も想像もしていませんね。

馬場:日本には本来の「広場」って存在していたことってあるのかな?

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