なぜ日本の駅前広場は「噴水だらけ」なのか 公的空間のまったく新しい利用法とは?

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野尻:でも国交省がすでに対応を変えているのであれば、今後、自治体が条例を外すなりすれば、新しい利用の可能性はありますよね。

馬場:ものすごくあります。首長が「やる」と言えば現場は動かざるをえない。市町村も最近は競争の時代に入っているので、どこかで成功した事例が出てくれば、あちこちの自治体が一気に右へ倣えをするようになるんじゃないですか。

野尻:このパブリックアライアンスに全国にやる気のある首長を巻き込んで、そこで成功事例をつくっていけば世の中が変わると思いますね。

維持にカネのかかる噴水を解体して、託児所を作れ

――日本の駅前広場の事例をもう1つ紹介します。JR恵比寿駅西口の駅前広場(東京都・渋谷区)です。駅前ロータリーの横に噴水が設置されています。

野尻 佳孝(のじり よしたか)/株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長。1972年東京生まれ。1998年に独立しテイクアンドギヴ・ニーズを設立。2001年に株式上場、2006年東証1部。CSV(共通価値創造)経営を標榜、2017年春にTRUNK(HOTEL)の開業を予定

野尻:この規模の噴水の、水光熱費やメンテナンスの維持管理費ってどれくらいかかると思います? 全国の結婚式場に約200のプールを持っている私たちの経験からすると、年3000万円くらいはかかっているはずです。噴水って日本中にありますけど、噴水って本当に必要なんでしょうか。

木下:駅前ロータリーの噴水って、気がつかない人のほうが多いんじゃないですかね。

野尻:でもその水光熱費や維持管理費はすべて税金。そうであれば、その費用は別のコストに振り向けるアイデアがあってもいいんじゃないかと思うんです。

稲本:恵比寿のロータリーって狭いのに、この噴水は相当な面積を占めていますよね。

野尻:そう、結構な面積を使っています。そこで、渋谷区はいま待機児童の数が多いんですが、このスペースがあったら駅前託児所を造れると思う。それがあったら、みんなここに子どもを預けて出勤できる。そういう使い方もできるはずなんです。

託児所だけじゃなく、建物の1階にはカフェやライフスタイルショップを入れて、その収益でメンテナンス費用を賄えば社会コストをかけずに運営することができる。いまは逆に噴水の維持に社会コストがかかっているんだから、一石二鳥だと思いません? だから、まずは都内の噴水を全部潰していくっていうアイデアはどうですか。

稲本:言っちゃったね(笑)。

野尻:噴水を壊すのにも税金は使わなくてもいい。民間企業に「定期借地で貸すから噴水の解体から託児所建設までやりなさい」と言えば、手を挙げる企業は出てくるはずです。

稲本:確かにこれだけの好立地だったらやるだろうね。

馬場:噴水を狙い撃ちするっていうのは確かに面白いね。

稲本:いま保育園や託児所が新設できないのは、子どもたちの声を騒音だといって反対する人が多いから。駅前だったら騒音が問題になりようがないしね。

野尻:気をつけなきゃいけないのは、子どもたちが車道に飛び出したりしないようにすること。その配慮ができれば大きな問題はないと思うんですよ。

稲本:そういう場面で生きるのがペデストリアンデッキだね(笑)。

木下:広場を駅ビルの直結の託児所拠点として活用する、これはいいですね。

本記事は2月23日に行われた「第2回パブリック・アライアンス・トーク」のライブをもとに再構成したものです。第3回は3月28日(火)に開催予定。詳しくはこちらをご覧ください(有料参加が可能です)。
阿部 崇 ジャーナリスト

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あべ たかし / Takashi Abe

1969年福島県生まれ。経済誌記者を経てフリーに。現在は週刊誌を中心に活動中。

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