松下幸之助「2代目はとにかく謙虚であれ」 経営の神様が語ったこと

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そういう中で、事業を引き継ぐのであるからして、2代目の人は、腰を低くして、創業者や先輩諸氏から教えを請うといった姿勢がなければならんのや。

それを、自分が事業を引き継いだのだから、もう、このお店は、会社は自分の考えで、自分独自の方針でやります、周囲の意見は聞きません、というようなことになれば、これは創業者も先輩もいい気分にはなれんわな。

なにを言っておるか。若いのになにを威張っておるのかということになる。そういう反感がでてくれば、やりたいことも、やらなければならないことも、思うようにできんということになる。

いや、みなさんの協力をいただかなければ、私は経営を円滑に進めていくことはできません、ご指導ください、お力をお貸しください、ご助言ください。謙虚に、そして腰を低くして教えを請うという雰囲気であればかえって、いやいや、きみもしっかりしているし、実力もあるのだから、思う存分やればいいよ、ということになる。それが人情というものやな。

創業者や先輩の権威を積極的に活用せよ

謙虚に振る舞えば、先代の、また先輩の力や気持ちを自分の都合のいいように集めることができるわな。そういうことをせんと、いかんわけや。とにかく、先代を、また先輩を自分の強力な応援団にするためにも、創業者に、ま、先代やわね、あるいは先輩諸氏に謙虚に振る舞うということが、とにかくまず大事なことやな。

そして、こんどは、その創業者や先輩の権威を積極的に活用することや。自分がこう思うというより、創業者はこういうふうに言うてますよ、こういう考え方ですよと社員に話をする。自分の考えを、創業者の言葉を借りて話をする。

社員のほうも創業者の人もそう言うてるのか。そうか、そうであるとすれば、がんばろうということになる。それだけではない、創業者の考えを、こんどの新しい社長はよく理解しているということになる。ああ、えらい社長やな、りっぱな人やということになる。あるいは、こんどの社長は衆知を集めて経営を進めるらしい。自分たちの話も聞いてくれるらしい、という気分にもなる。そんなもんやで。だから、先輩の、とくに創業者の権威をおおいに活用できるかどうかやね。

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