金融街で働く人は「嫌なヤツ」ばかりなのか 200人以上取材した記者が見た実態
「ATMで貯金を全部おろしたほうがいい」「子どもを連れて田舎に避難してくれ」――。2008年、9月15日。米リーマン・ブラザーズ破綻数時間後、英国の金融街に勤めていた人たちの一部はこんなパニックに陥っていた。
あれから8年半。すべてが「通常」に戻ったように見える今でも、あのショックを引き起こしたのが、具体的にいったいなんだったのかわからない。同時に、あれ以来多くの人は金融街に働く人たちの「貪欲さ」が危機を招いたんだと何となく思っている。その後、金融機関が「大きすぎて潰せない」と救われたことに対しても納得できない気持ちを抱えている。
金融危機を招いたのは、本当にそこに働く人たちだったのか。こんな疑問を持って取材に挑んだのが、オランダ人ジャーナリストのヨリス・ライエンダイク氏だ。
長らく中東で取材をした経験を持つ同氏だが、金融はまったくの門外漢。それでも、2年間かけて英金融街「シティ」に働く人々200人以上を取材すると同時に、英ガーディアン紙のサイトで「バンキング・ブログ」を始め、爆発的な人気を得た。その取材を「なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?」にまとめたライエンダイク氏に、金融業界が抱える課題について聞いた。
金融メディアは一般人のために書いていない
――ヨリスさんは今回、2年かけて200人以上に取材をしました。こうした取材の仕方は最近「スロージャーナリズム」とも呼ばれていますが、この取材方法と通常の金融メディアによる報道の違いは。
金融業界には、フィナンシャルタイムズやブルームバーグなど、専門性の高いメディアがあるが、こうしたメディアの対象は業界関係者だ。そのほかの多くのメディアは、金融メディアが伝えることをそのまま横流ししている。しかし、金融メディアは、一般人のためには記事を書いていない。僕が取ったアプローチはまずそこからして違う。
業界に対するスタンスも異なる。金融メディアであれば、業界の非常識をそのまま受け止めるし、タブーは破らない。なぜかというと、金融メディアはその業界に勤める人のためにあるのだから、業界を壊すようなことは自らしない。
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