「テロ対策特別措置法」期限延長の問題は、国際貢献のあり方から議論すべし【1】

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国際貢献は非軍事分野で行なうべし

 今回、2007年11月1日で本法は期限切れとなります。その延長に民主党がどう対応するかが注目を集めています。民主党の小沢代表は、延長反対の意見を表明しています。その理由は以下のとおりです。

○ インド洋上で自衛隊が後方支援活動を行っている多国籍軍による海上阻止活動は、国連安保理決議を根拠とするものでない(ただ、9月19日に国連安保理決議前文に、自衛隊が参加する米国主導の対テロ作戦「不朽の自由作戦」(OEF)への謝意が示されました。ロシアはOEFの活動は国連の枠外で行われているものだとして棄権しています)
○ 政府から洋上活動に関する十分な情報が開示されていない
○ 自衛隊の海外派遣は国会の事後承認となっている

 私も自衛隊のインド洋上の多国籍軍洋上支援には反対ですが、その理由は、小沢代表の意見とは大きく違います。私は、そもそも「わが国の国際貢献を非軍事的な分野で行うべき」と考えています。多国籍軍による「OEF」への日本の支援は、軍事面での貢献であり、行うべきではないというのが私の考えです。

 では自衛隊は何を行うべきでしょうか。例えば、JICAやNGOによる食料・医療・教育支援や警察組織の再構築、そして復旧作業といったアフガニスタンが安定するための支援。こうした地域的なテロの原因である貧困や教育の不足こそが、自衛隊が解決すべき問題でしょう。JICAの緒方貞子理事長も「人間の安全保障」という観点からのアフガニスタン支援の可能性を示唆しています。

 テロ特措法に基づく自衛隊の活動実績(7月26日現在)を見ると、表のようなものが、「不朽の自由作戦」に参加する多国籍軍に提供されたことになっています。

 防衛省は、「湾岸戦争で1兆3000億円を支出しても、国際的な評価は得られなかったが、今回は220億円しか使っておらず、コストパフォーマンスが高い」と言わんばかりの資料を作成していますが、どうも焦点が違っているのではと感じてしまいます。

 いま必要なことは、わが国が本来やるべき国際貢献とは何かの議論、また自衛隊の活動が国際社会からどのように評価されているかの議論です。コストの問題も重要ですが、それは一番最後にやるべきではないでしょうか。

 アメリカ政府が「後方支援の継続」を要望しているとの説明もよくされます。しかし、アメリカ連邦議会においては民主党が多数となり、アメリカのアフガン対策の方針も変わってくるでしょう。そうした動向を十分把握しないまま、現政権の発言のみを根拠に継続かどうかの議論を進めることには危険性も感じます。

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