中国の地方政府が「破綻する」という悪夢 代表格は江蘇省か
[無錫市(中国) 25日 ロイター] - 中国経済を急成長から脱皮させようと試みる政府指導部にとって悪夢のシナリオは、地方政府が自らの債務の重みで崩壊することだ。最も多額の債務を抱える江蘇省がその代表格といえる。
公式統計によると、江蘇省の省、市、郡政府は銀行や投資信託、起債を通じて借り入れを膨らませており、債務は他の地方投資をはるかに上回っている。
造船や太陽光パネル製造など、同省の主要産業の多くは過剰な生産能力を抱え、利益は低迷して税収は伸び悩んでいる。中央政府が経済の投資依存を減らし、サービス業・消費主導型経済への移行を図っていることにより、江蘇省は打撃を被りやすい状態にある。
政府は改革の一環として、多くの地方政府にとって主な資金源である借り入れと土地売却の取り締まりを命じる一方で、産業の縮小に伴うコストを地方政府自らが吸収することを期待している。江蘇省のような省にとっては八方ふさがりの状況だ。
スタンダード・チャータード、フィッチ、クレディ・スイスの推計によると、中国の地方政府の債務は国内総生産(GDP)の15─36%相当、額にして最大3兆ドルに上る。
ドイツ銀行のグレーターチャイナ担当チーフエコノミスト、ジュン・マー氏は「中国地方政府の債務は、うまく管理しないとシステミックかつマクロ経済的リスクを同国にもたらし得る。これにはブラジルの先例があり、1989年、93年、99年の危機は州政府の過剰債務が根本原因だった」と話す。
中国地方政府の債務総額について公的な情報は乏しいが、格付け会社やシンクタンクの情報を総合すると、江蘇省の債務リスクは全31省の中でも突出している可能性がある。
江蘇省が中国経済に大きなリスクをもたらしかねないことは明らかだ。同省の域内総生産(GDP)は20カ国・地域(G20)メンバーであるトルコを超えて世界の上位20カ国に食い込む規模で、人口は7900万人と大半の欧州諸国を上回る。