下限はGDP7%増? 中国構造転換の隘路 成長率の急減速は回避したが、難局はこれから

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(写真:AP/アフロ )

かなり悪い数字になるのではないか──。市場関係者の間でそんな不安もささやかれていた、中国の2013年4~6月期のGDP(国内総生産)。

しかし、15日に発表された速報値は前年同期比7.5%増と、事前の市場予想どおり。1~3月期の7.7%増からは減速したものの、市場には「思ったほど悪くない」という安堵感が広がった。同日に会見した国家統計局の盛来運報道官は、「目標(13年の成長率7.5%前後)達成に問題はない」と述べている。

投資主導で高成長を実現してきた中国経済。だが、不動産バブルや製造業の過剰投資など、成長を急ぎ過ぎたゆえの歪みが顕在化している。3月に就任した李克強首相は、「持続的で健全な発展」に向けた経済改革を推進。過剰融資に歯止めをかけるため、通常の銀行融資と別ルートで膨らむシャドーバンキング(影の銀行)にも目を光らせる。

ただし、健全化を優先するあまり、締め付けを厳しくしすぎると、必要以上に景気を冷やしかねない。製造業の投資が伸び悩み、工業生産も鈍化するなど、足元の経済指標は総じて軟調だ。10日に発表された貿易統計では、6月単月の輸出が12年1月以来のマイナスに転じ、市場関係者の不安が増幅した。

今回の輸出急減は、輸出水増しを利用した投機資金の不正流入を当局が厳しく取り締まり、香港向け輸出が減った影響が大きい。とはいえ、ウエートの大きいEU向け輸出は3月以来、前年同月比で減少が続く。1~6月のGDPに対する純輸出の寄与度は0.1%ポイントまで低下しており(1~3月は1.1%ポイント)、外需頼みの成長は望みにくい。政府は経済構造の転換に向けた難しい舵取りを強いられている。

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