猪木、山本太郎、そしてグリーに捧げる言葉 グローバルエリートが参院選の結果を分析

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山本太郎氏の意外な当選

あと山本太郎氏が当選したのは驚いた。私は長らく日本を離れているので全然詳しくないのだが、「特定の怪しげな団体の支持を受けている」とか「山本氏はウソばかりついている」とか、適当なことを並べ立てて信憑性の薄い評論家の皆さんが大いに反発しているが、これだけメディアの袋だたきに遭いながらも、60万票を獲得した事実は重い。まぁ、支持者が政策を吟味して投票した、というより、感情的に“頑張ってはるから”といった理由で投票していることが多い気がするのだが、別に選ばれたほかの政治家の面々も大した政策があって選ばれているわけではないので、太郎氏だけこき下ろすのは不当であろう。

なお山本氏が、当選した時も万歳をせず、「議員になるのが目的ではなく、ここからがまさにスタート」と発言していたのは、これに限って言えば、議員のバッジをつけて先生と呼ばれたいだけの数合わせ議員の皆さんと比べて極めて立派である。別に山本氏を私が支持しているわけではなく、脱原発への支持・不支持を述べているわけでもなく、また山本氏が脱原発を実行できると思っているわけでもないが、ともあれ「私はこのアジェンダの解決のために議員になります」とシングルイシューでもいいから責任もって明言している候補がどれだけいるだろうか。

実はシングルイシューは勇気がいるアプローチで、その問題がどれだけ解決されたか、議員の活動の成果が、有権者の目にわかりやすくなってしまう。国政を担おうという人は、すくなくとも自分にとって最優先の政策は何かという問題意識と、なぜ自分だからこそ解決できるのか、という能力の二点を明示的に有権者に発信すべきであろう。しかし残念ながら、大抵どちらも持ち合わせていないので、名前を連呼して握手を求めるだけの迷惑な選挙戦を展開している。

山本太郎氏に関して言えば、どうせ感情的な思いだけで、不勉強で実行力などない、とタカをくくっている人が大半だと思うので、ぜひいい意味で見返してほしい。間違っても大勢からの批判が怖くなって迎合し、(人気商売の政治家や芸能人で多いように)正反対の方向に振れて普通のワンオブゼムにならないようにしてほしい(なお念のために付け加えておくと、私は山本太郎氏を支持しているわけではない)。

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