「鉄道廃止」を受け入れた夕張市の狙いとは? 財政破綻の経験が生んだ「攻め」の姿勢
鉄道路線の存続を巡る議論が巻き起こると、大抵の場合は“事業者vs自治体”といった図式になりがちだ。現在のJR北海道における問題でもそうであるように、鉄道事業者側が路線の廃止や沿線自治体への支援を求めるのに対して、自治体側が反発する……というパターンはもはやお約束。だが、そんなお決まりのパターンに反して、“鉄道路線の廃止”を積極的に受け入れる決断をした自治体がある。
北海道夕張市。2016年夏、同市は新夕張-夕張間を結ぶ石勝線夕張支線の廃止受け入れでJR北海道と合意した。夕張市長は「攻めの廃線」と語ったが、果たしてその真意はどこにあるのだろうか。中には「補助金目当て」と揶揄する声も聞こえてくるが……。
交通のあり方を考えた上での結論
「補助金のことはまったく考えていません。夕張支線の廃止受け入れは、鉄道の土木構造物の老朽化や実際に利用している人がどれだけいるのか、さらに市内の交通がどうあるべきかを総合的に考えた上での結論です」
こう語るのは、夕張市まちづくり企画室の佐藤学主幹。夕張支線の廃止を含めた市内交通ネットワークの再編を手がけている担当者だ。
「JRさんから、100年を超える土木構造物が多く、維持していくのが難しいという話がありました。このまま鉄道を維持していても、いずれは廃止の話がやってくる。また、もし長期運休になって、バス会社もそれを補うだけの力はない……となったらどうするのか。そうしたことも考えると、こちらから廃止を受け入れて、その上で市内の交通をどうしていくのかを住民の皆さんと一緒に考える機会を作ることが重要です。廃止受け入れにあたってJRさんにお願いしたのは、社員さんの派遣だけです。既に夕張に来ていただいて、一緒に市民の方と膝を突き合わせて話をしながら、交通再編に取り組んでいます」
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