JRマーク作成の舞台裏、「NR」も候補だった Jリーグ、JTなどJRが先鞭つけた「J」の系譜

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「JRシンボル・マーク鉄道車両貼付け指示書」の一部

当初、4月1日にJRマークをつけて走る列車は、特急の一部と山手線など通勤列車だけの予定だった。だが、どうせならすべての列車につけようということになった。とはいえ、3月31日の終電から4月1日の始発まで4~5時間しかない。1万両もの車両にJRマークを張ることができるのか。

「最後のご奉公。やりましょう」。全国の国鉄職員が一肌脱いだ。ジョイフルトレインと貨車を除く全列車の機関車と運転台付き車両に、国鉄職員が自らの手でマークを張った。

マークを車両のどの位置に張るか。全国すべての車両について、短時間で作業を終えるための指示書を山本氏が作成した。「私自身は決して鉄道に詳しくない。あるスタッフの息子さんが鉄道ファンだったことが幸いしました」と山本氏が振り返る。

はやりすたりではない基本的なデザイン

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「JRマークは古くならないですね。デザインにどんな秘訣があるの?」。最近、山本氏はあるデザイン協議会の関係者からそう聞かれたという。「はやりすたりではない基本的なデザインだから」。山本氏はそう答えた。50年、100年経っても古びない自信が山本氏にはある。

だが、それだけが理由ではないだろう。日本のナショナルフラッグキャリアー、日本航空は「JAL」マークをしばしば変更している。中には世界的なデザイナーが手掛けた「モダンで素晴らしい」(山本氏)デザインもある。しかし、経営が悪化すると気分一新とばかりにマークも変えてしまう。

つまり、JRマークが30年続いたのは、グループが総じて順調に経営を続けていた証しともいえるのだ。JRマークが今後も輝き続けるかどうかは、JRの経営努力次第だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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