JRマーク作成の舞台裏、「NR」も候補だった Jリーグ、JTなどJRが先鞭つけた「J」の系譜

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ロゴマークのデザイン案は100以上に上った。JR、NRだけでなく、6つの旅客会社のレールをデザインした案やRailway(鉄道)の頭文字「R」もあれば、北海道は1、東日本は2といった具合にナンバーを振るという案もあった。

翌年1月16日、最終的に2案に絞られた中から現在のJRマークに決まった。JとRをくっつけただけのシンプルなデザイン。だがそこに山本氏は、「レールは全国で1つにつながっている」という思いを込めた。鉄道車両は一方向ではなく、双方向に動く。そこでJRの文字が右へ動いても左へ動いても違和感がないようにデザインしたという。

ロゴマークの次は各社のシンボルカラーの選定作業。15色の中から各社の社長候補の人がメインカラーとサブカラーを選んだ。ちなみに、この15色は当時のモノクロコピー機のトナーに付着させてカラー化するフィルム「アイロテック」の色だという。

「金」を「失う」は縁起が悪い

山本洋司(やまもと・ようじ)/ビジュアルメッセージ研究所社長。1943年生まれ。武蔵野美術大学卒。JR、JF、住友林業、商船三井などCIデザイン多数(撮影:尾形文繁)

続く作業は社名のタイポグラフィ。JR各社から国鉄清算事業団まですべて山本氏が手掛けた。今のようにパソコンが発達してはいない時代。手書きのものを写真製版し、それをトレーシングペーパーでトレースした。鉄道の「鉄」は金を失うと書く。縁起が悪いということで金偏と「矢」を組み合わせた「鉃」というデザインにした。「鉃」という文字が存在するかどうか国会図書館で文献を調べたのも、山本氏を含むNDCプロジェクトチームのよい思い出だ。

CIに関する報道発表は2月20日。そのプレスキットの最終印刷入稿前日の夕方5時にタイポグラフィなどのデザインは無事了承された。しかし、山本氏は細部が気になった。「一度決まるとずっと使われる。気になる部分がずっと残ってしまう」。山本氏は全社のタイポグラフィを一晩ですべて作り直して、翌朝10時の印刷会社入稿に間に合わせた。報道発表後がまた大変だった。社旗、名刺、バッジ、封筒、券売機などのロゴデザインも作成しないといけない。使用禁止例のルールも作った。

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