アサンジとスノーデン「情報暴露者」の行く末 トランプ政権が変えうる2人の運命

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なぜエクアドル大使館だったのか。コレア政権が、南米にいくつかある反米左翼政権のひとつで、最終的に身柄がアメリカに引き渡されないよう、アサンジ氏を匿う立場だからだ。これまで最大の後ろ盾となってきたのがコレア大統領なのだが、大統領選の結果、もし野党候補が勝利するようなことになれば、あるいは、コレア大統領の与党後継候補の気が変われば(その可能性は低くない)、アサンジ氏は意に添わないかたちで駐英大使館から外に出されることになる。

少し前なら、アサンジ氏の運命は、そこで完全に暗転することになっただろう。アメリカの国防上、外交上の機密文書(外交公電など)を、アサンジ氏が開設(2006年)したサイト「ウィキリークス」で、2010年に大量に暴露したからだ。アメリカに限らず世界各国の政府によるダーティな活動を白日のもとに晒したことにより、ウィキリークスは喝采を浴び、アサンジ氏も英雄となった。しかし、アメリカ政府からは追われる身となり、アサンジ氏に情報を渡したマニング元米陸軍上等兵は、禁固35年の実刑判決を受けた(2017年初めのオバマ大統領の減刑により、来年5月に釈放予定)。アサンジ氏も、同様の長期刑に処される可能性が高いと見られてきたのだ。

状況に変化が

ところが、ここへきて状況は変わりつつある。アサンジ氏が、「トランプ大統領の恩人」とも言うべき立場になったからだ。昨年の大統領選のさなか、ウィキリークスは民主党やヒラリー・クリントン陣営の大量のメールを暴露した。ロシアがハッキングして得た情報を「ウィキ」に流したと、米情報機関は見ている。

昨年7月頃から始まったこの反ヒラリー・リークは、トランプ氏の過去の「女性蔑視・卑猥発言ビデオ」が米メディアで報じられた直後にも行われ、トランプ氏のダメージを緩和したとされる。逆に度重なるリークでクリントン候補が支持を失っていったことも間違いない。トランプ候補は選挙戦中、「アイ・ラブ・ウィキィ!」と絶叫した。

かくして、もしアメリカに身柄送致されても、アサンジ氏がこれまでの予想通りの裁きを受けるのかは見通せなくなった。こうなると、イギリスもしくはスウェーデンが送致するかどうかも分からない。長年、大使館の1室に閉じこもって暮らしてきたアサンジ氏は、かなり精神的に追い詰められているとも言われる。昨年以来、マニング元上等兵の減刑をしてくれるなら、自分はアメリカへの引き渡しを受け入れるとも語っていた。しかし以前とは、彼に対する目が、二重の意味で変わっている。

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