●掲示板の書き込みから見えてくるマインドの変化
例えば「フィードバック(FB)」。人気企業ランキングの上位にも名を連ねるあるメーカーが、アンケートへの回答を採用活動にFBしたところ、瞬く間に掲示板に書き込みが寄せられた。企業のとったFB方法に対して好意的な感想や意見ばかりが書かれたわけではないが、自分と同じ選考プロセスにいる人の意見や感想は、「ホンネ」の意見として学生たちは受け取っている。最初に否定的な書き込みがあったとしても、次にそれを諌める発言や「私はこう思います」という仲間の意見があれば、書き込んだ当事者もそれを見ていた第三者も、比較的素直に耳を傾け、自分の考えを整理するために役立てているようだ。
また、ある企業のFBに関する書き込みが、別のフォロー情報に発展する場合も珍しくない。
情報の発展フローは以下のようになる。
(1)選考中の採用フェーズにおいてA社が非常に丁寧なFBを行う
(2)A社の丁寧なFBに感激した学生BがA社の行った対応を掲示板に書き込む
(3)A社を受けている別の学生Cがそれを見る
(4)学生Cが自分の先輩Dさんは内定の段階では「こんな丁寧な対応をしてくれた」と別の情報を書き込み、素晴らしい会社だから「一緒に内定がもらえるように頑張りましょう」と情報とエールを送る
(5)学生Bは「A社の学生に対するFBは今年だけの場当たり的なものではない」と感じる
(6)学生Bと学生Cのやり取りをA社の掲示板に登録している学生がチェックしている
いかがだろう。
上記のA社が行ったFBは、長丁場の採用活動シーズンのあらゆるプロセスにおいて採用ブランド構築のコンテンツになりうるはずだ。
かつてのように「売り手市場=母集団拡大戦略一辺倒」という考えでは質を追い求めることはできない。企業は選考フェーズにおいて従来の「選考」から「説得」による動機形成へ戦略をシフトし始めているのだ。
具体的には、志望度の高い学生を絞り込み、なぜ内定なのかを伝えることで内定辞退率の改善を図っている。
掲示板での書き込み内容から例をあげれば……
「選考段階を通過するごとに面接結果をFBしてくれた。そのたびにあなたは非常に論理的な人だとの評価をいただけた」……という具合だ。
学生は自分がなぜこの企業から評価されているのか、FBを通じて具体的に知ることができている。「選考」から「説得」による動機形成とはこのようなコミュニケーションをフェーズごとに積み上げていく行為なのだ。
そして、そのような企業マインドの変化は、学生のマインドにも変化を生じさせている。
そのマインドの変化を一言で言い表すと「ババを引きたくない」、つまり「本当の情報を知りたい(知ったうえで判断したい)」という言葉で表現できる。
事業モデルが広告で成立している就職ナビや、自社のホームページによるオフィシャルな情報発信は、あくまで「事実の確認」であり、根っこの部分での動機形成ツールとしては限界を禁じ得ないというのが、CGMから見えてくる学生の動き、マインドの変化だと考える。
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