豪雨災害で6年不通「只見線」復活への道のり 上下分離、地元一部負担での復旧方針決定

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2016年2月現在、焦点となっているのは鉄道軌道整備法の改正。自民党の議員連盟がまとめた法案で、JR東日本の被災各路線や、熊本地震による不通が続くJR九州の豊肥本線など、黒字会社の路線であっても、国庫からの補助を可能とする内容である。平成28年度の通常国会での可決、成立が目指されている。

この改正案が国会を通ると、福島県をはじめ、地元自治体の負担は軽くなる。他の路線への適用も期待され、同じ東日本大震災にて被災した鉄道でも、赤字の三陸鉄道は早期に原状で復旧したが、黒字のJR東日本が経営する山田線は復旧決定が遅れ、経営スキームの変更を余儀なくされたといったような「復興格差」の解消にもつながろう。

再開後の活路は観光路線化に

会津川口〜只見間の代行輸送にはマイクロバスを使用。利用者の少なさがうかがえる(筆者撮影)

会津川口〜只見間の運転再開は、今のところ2020年度頃が目標として見込まれる。しかし、列車が走りはじめてからでは遅いとの認識から、福島県は2017年度より、会津地方の地域振興策の一環として、沿線自治体と協力し只見線の利用促進を図る。これは2016年12月13日の定例県議会で尾形淳一生活環境部長が示した意向である。

それによると、まず地元住民の代表者や地域活性化に取り組む有識者による利活用プロジェクト会議を設立。この会議を中心に利活用促進計画を策定する。具体的な利用目標も定められる。計画の始動は2018年度を予定する。

どのような計画が策定されるかは、これからの協議検討次第であるが、人口増加が望めない地方である以上、内外からの観光客の流入を期待する内容となることが予想される。費用対効果を考えると、地元自治体が負担する年間の赤字の補填額2億1000万円が収入増加額の目標となろう。

しかし、年間の旅客収入が全線でも1億4800万円しかないことを考えると厳しい。1日当たりに直すとリアリティが出てくるが、約58万円の増収が必要だ。これは基本的な普通列車の運行経費だけの計算であり、仮にイベント列車を考えるとなると、導入費用、メンテナンス費用を、さらに投資する必要がある。

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