トランプよ、雇用を奪ったのは輸入ではない

貿易戦争の無意味さに気づく日は来るか

トランプ大統領と安倍首相のハネムーンはいつまで続くのか(写真:UPI/アフロ)

2月10日に行われた日米首脳会談で、安倍晋三首相は期待以上のものを得た。トランプ大統領の支持基盤には反日の機運が強いが、この"ハネムーン"はどのくらい続くのだろうか。

安倍首相は、安全保障上の諸問題についてトランプ大統領から確約を得たようだ。たとえば尖閣諸島は日米安全保障の適用対象であるという、オバマ前大統領が打ち出した姿勢を、あらためて確認した。また、会談前にトランプ大統領が非難していた問題に関するバッシングを、安倍首相は巧みに避けている。「会談に同席した者によれば、安倍首相が議論を先導し、トランプ大統領はほとんど聞き役だった」という報道もある。会見に先立って、安倍首相の側は日本企業が米国で予定している投資案件をまとめ、お望みとあらば「70万人の新規雇用を創出するよう日本を説得した」とトランプ大統領がツイートできるようにしておいたのだ。

経済問題はペンス、麻生両氏の交渉に

トランプ大統領は会談前に幾度となく「日本は円安誘導して輸出を増やし、米国の雇用が犠牲になっている」と批判を繰り返してきた。ところが、今回の共同声明では為替に関する言及はなく、共同記者会見でも為替や貿易問題についての批判はなかった。トランプ大統領は「最終的に、日米は同条件になる。皆の予想よりも早く」と述べるにとどまった。正確には、これは中国について質問された際の答えの一部で、日本についての明確な言及ではない。為替の問題については、米国財務省と日本の財務省の間で議論することで合意した。

「2国間のFTA(自由貿易協定)については、為替操作に対して拘束力のある規則を作ることこそが重要」というトランプ大統領の見解を、安倍首相はうまくかわした。2国間のFTAでは、日本は得るものより失うもののほうがずっと大きい。日本にとってTPP(環太平洋経済連携協定)の目的は、中国への対抗勢力として米国にアジアの中でより活動的な役割を担わせることがすべてだった。米国が譲歩したのは農業だけで、日本製の乗用車に対する2.5%の関税を25年かけて、日本製のトラックに対する25%の関税を30年かけて、撤廃するとしている。

トランプ大統領は2国間のFTAではなく、マイク・ペンス副大統領と麻生太郎副総理をトップとして新しい形の「経済対話」を作り上げるという安倍首相の提案を受け入れ、その枠組みの中で金融政策や貿易、経済協力などを議論するとした。この戦略はうまくいったようだ。共同声明でも記者会見でも、2国間のFTAについての言及はなかった。安倍首相の側では、トランプ大統領はトヨタ自動車のメキシコ投資を批判したものの、ペンス氏がインディアナ州知事時代にトヨタと良好な関係を築いていたことを熟知していた。

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