LOHACOでふぞろいポッキーがバカ売れの理由 アウトレットはただの「在庫処分」じゃない

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LOHACOが一部メーカーとアウトレットの取り組みを開始したのは2013年ごろのことだ。その後、試行錯誤を経て、昨年11月末から「ブランドアウトレット」として、各メーカー(ブランド)の独自コーナーもオープンした。最初は手探り状態だったが、洗濯バサミや物干し竿など、(LOHACO側が想定していなかった)意外な商品が売れることに気づいたという。洗濯バサミが売れるなら、当然洗剤やトイレ関連商品なども置けばいい。こうして徐々に商品は増えている。

さらに、LOHACOの場合、2014年に設置した有力メーカーと連携した組織「LOHACO EC マーケティングラボ」の存在が強みとなっている。これは、LOHACOが顧客の購買情報のビッグデータ(個人情報を含まない)をメーカーと共有、「顧客が何を探しているのか」「なぜ買ってくれなかったのか」などを分析し、次の商品開発やマーケティング(顧客創造)に生かしていくというもの。現在は102の大手メーカーが参加している。

アウトレットをきっかけに新顧客を獲得

実は、メーカーにとっても「きちんとしたアウトレット」であれば願ったりかなったりだ。通常、売れ残って在庫になってしまったものは、セールなどでさばいたり、二束三文で別業者に引き取ってもらったりするのが関の山。「バッタ屋」に流れブランド価値を毀損するくらいなら、損が出るにせよ廃棄処分したほうがいい。

だが、アウトレット品の販売で新たな顧客を開拓できるとなれば、話はまったく別だ。実際、前出の「ふぞろい品ポッキー」では、買った顧客のうち半分以上が、LOHACOでグリコの商品を初めて買った人々だった。買った人々の購買データはビッグデータとして集められ、次の新商品開発などに向けての貴重なデータとなる。実際、LOHACOのアウトレットを積極的に活用するメーカーは「EC マーケティングラボ」の参加企業が多く、LOHACOとは厚い信頼関係で結ばれているといえそうだ。

効果はそれだけにとどまらない。よく見ると、アウトレット商品のすぐ近くには、しっかりメーカーのプロパー(正規)商品が並べられており、「ついで買い」を誘う導線も張られている。LOHACOの場合、1900円以上の注文で配送料が無料(税込み、一部商品を除く)ということもあり、「もう一品」を勧められることも大きい。

今後のアウトレットで、LOHACOはどんなことを考えているのだろうか。たとえば、現在行っている「1週間に1度の新商品入荷の告知」は効果的だが、それに加えて、特定のお得な商品を断続的に買い付け、限定的に予約販売することなども検討中だという。

顧客がお買い得商品を買える「新たな出会い」をつくり、出品メーカーも次につながるマーケティングツールとしてアウトレットを構築するLOHACO。先行する楽天やアマゾンには規模はまだ及ばないが、今後も独自の展開が期待できそうだ。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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