百貨店は「ユニクロ」「ニトリ」入居で甦るのか 苦戦する百貨店の構造改革はどこへ向かう?

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その最たる事例が、三陽商会と衣料品ブランド「バーバリー」とのライセンス契約終了です。バーバリーの売り場がなくなって、このブランドのお客様が別のブランドを買うようになったかというとそうではなく、単に買わなくなっただけでした。

バーバリーとの契約が終了した三陽商会。百貨店にとっても大きなダメージを受けている(撮影:尾形文繁)

これは、お店についているお客様にも同じことがいえます。たとえば、ピーク時には400億円強、1999年の閉店時でも百数十億円の売上高があった東急百貨店日本橋店の閉店後、近隣の高島屋日本橋店や三越日本橋本店の売り上げが増えるかと思いきや、実際はほとんど寄与しませんでした。

バーバリーを買わなくても、困ることはない

つまり、百貨店顧客というのは、魅力あるブランドやお店についたファンであり、それ以外に移ることはありません。生活必需品を売っているわけではないので、それがなくても困ることはないのです。こうした低迷の原因を把握せず、今までの考え方や発想のままでテコ入れしようとすると、再生への道は険しくなってきます。

その結果、相次いでいるのが不採算店舗の閉鎖です。2016年9月末には、そごう西武が西武旭川店とそごう柏店を閉店し、2017年2月末には西武八尾店、西武筑波店の閉店も予定されています。三越伊勢丹ホールディングスも、同3月に三越千葉店と多摩センター店の閉店が控えています。

さらに、自前の売り場を圧縮してテナントとして貸し出し、安定した家賃収入を得て営業利益を底上げすることで活路を見いだそうとする百貨店も続々と出てきました。これまでも、大丸松坂屋百貨店は「東急ハンズ」や「ヨドバシカメラ」などの大型テナントを誘致し、テナントリーシングを強化してきました。

それに加えて、立川タカシマヤには「大塚家具」やユニクロ(2015年に退店し、跡地に「ジュンク堂書店」を導入)、新宿タカシマヤでも、併設しているSC部分に、ユニクロや東急ハンズ、ニトリなどを入れ、横浜郊外にある港南台タカシマヤは改装をかけて2フロア分にニトリを入れました。とくにニトリは、2015年から2017年1月現在までの間に百貨店内に計5店を出店しており、ほかの百貨店もこぞってラブコールを送っている状況です。

百貨店側は、安定した賃貸収入のみならず、テナントにこれまでの百貨店顧客とは異なる層を呼び込んでもらい、自前売り場での買い回り効果も期待しています。しかし、実際のところは、百貨店内の大型テナントのほとんどの顧客は、そこのみを目的として入店し、目的のものを買ったらほかのフロアに立ち寄らずに帰ってしまいます。

さらに、入居したテナントとて、儲けられない立地であることがわかれば、撤退は辞しません。百貨店自体に魅力がなければ、1度空いてしまったテナントを埋めることは難しくなり、賃料収入を得ることも難しくなります。

したがって、テナントリーシングが必ずしも儲かるビジネスモデルであるとは限りません。実際、このモデルを導入しているショッピングセンターとファッションビルの2015年の売上高を見てみると、総額は前年比4.5%増とまだ伸びていますが、店舗ごとに見てみると、成長しているのは全241店中上位150だけであり、あとは前年割れの状況と、格差が開いてきています(繊研新聞2016年8月10日「2015年度第21回全国主要SCアンケート調査」)。

したがって、テナントビジネス“後発組”である百貨店が、不採算店舗のテコ入れ策として、真っ先にテナントを入れるのは得策ではありません。

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