西武信金「異例の成長」を支える逆転の発想 縮小均衡の市場で伸び続ける戦略とは?
大手行を上回る「預貸率」
日本経済の低成長や人口減少に加え、企業のカネ余り、日銀によるマイナス金利政策の導入など、金融機関をめぐる業況が厳しさを増す中、異例の成長を続ける地域金融機関があります。東京都中野区に本店を構える西武信用金庫です。
2016年3月末の預金残高は1兆6346億円。全国で約260に上る信用金庫の中で預金量は15~20位前後と決して絶対的に大きな規模ではないものの、2010年3月末と比べると約3500億円、約12%も増えています。
顧客からの預金のうち、どのくらい銀行の経営活動の中心である貸出(融資)に回っているかを示す「預貸率」は、2016年3月期で76.05%。信用金庫業界の47%(2015年3月期基準)を大きく上回っています。2015年3月期決算との比較になりますが、国内銀行の預貸率は6年連続で低下し、平均で67.74%。大手銀行9行の平均は65.05%です。西武信用金庫は大手銀行をも上回っています。「不良債権比率」を見ても、2016年3月期の数字は1.74%、信用金庫業界の平均(6.3%)の3分の1です。
拙著『西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する』でも詳しく解説していますが、大手金融機関には到底規模で及ばない西武信用金庫が躍進している裏側には、6年前に就任した落合寛司理事長が推し進めた「逆転の発想」があります。
代表的な施策の1つが「お客さま支援センター」で行うコンサル業務です。職員を含めた、2000の機関と3万人のコンサルタント要員が、融資先を徹底的にバックアップします。ポイントは「外部の力」を活用していることです。
自分、あるいは上司、あるいは本部ができないことを外部の専門家に相談します。この場合の「外部」とは、コンサルタントの専門家、中小企業診断士、西武しんきんキャピタルなどの専門家グループに加えて学校も入ってきます。
狙いは顧客の健全化にあります。金融機関にとって実は融資先が倒産しないことが経営数字の向上に大きくつながります。倒産させると債権額の70%くらいが損失となりますが、助けるための費用は一般的には40%くらいで済むという逆転の発想です。
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