部下の支持を得られない上司の残念な接し方 話を「聞く」のではなく「訊く」姿勢がキモだ

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ラポールが築ければ、仕事を頼んでも「この人の言うことなら頑張ろう」という基礎的感情が生まれる。ラポールを築かず仕事を頼んだり任せたりすると、部下はイヤイヤ仕事をするようになる。まず、部下の心のコップをラポールでなみなみと満たしてあげることが肝要だ。ラポールの形成に成功すると後の指導がとても楽になる。

これらの「訊く」会話は、新人が部署に配属されたてのころには、会社の建物を案内しながら、歩きながらでも構わない。ちょっとコーヒーをすすりながらでも、最初の懇親会で酒を飲みながらでもいいだろう。仕事の合間合間で交わす会話でも構わない。あまり肩ひじ張らずに話す場面が好都合だ。自分から話しかけなくてもあいさつをしてくれる、無理に話させようとしなくても向こうから言葉が出てくるようなら、ラポールはうまく形成できたといえる。1、2週間もすればラポールの形成はおおよそ可能だろう。

会話を打ち切る方法とダレない方法

『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ところで、相手の話を聞いているうち、会話が盛り上がりすぎて話の切り上げ方に困る人もいるかもしれない。そういう場合は、話を切り上げやすいように、決められた休憩時間に話すようにするか、別室に歩いて移動するまでの時間とか、話を切り上げやすい場面で話すようにしたらよいだろう。切り上げる際には、手をパンとたたいて「よっしゃ、仕事に戻ろうか!」と声を掛け、席を立つと、スムーズに話を打ち切って、仕事に戻れるようになる。

また、こういう雑談の時に仕事に関係のないプライベートな話をしすぎると、上司と部下の人間関係がダレたり、部下が仕事とプライベートの境目を混同してしまい職場に規律がなくなったりしてしまうこともあるかもしれない。きちんとメリハリをつけるには、「仕事の顔」と「プライベートの顔」を分けるとよいだろう。休憩時間には打ち明け話をする間柄でも、仕事になると「さて、仕事の話だけど」と、まじめに話すモードに切り替える。上司のまとう空気が変わると、部下も気持ちを切り替えやすくなる。

篠原 信 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員

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しのはら まこと / Makoto Shinohara

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員。有機質肥料活用型養液栽培研究会会長。京都大学農学部卒。農学博士。高校を卒業後、2年がかりで京都大学に合格。大学生時代から10年間学習塾を主宰。約100人の生徒を育てた。本業では、水耕栽培(養液栽培)では不可能とされていた有機質肥料の使用を可能にする栽培技術を研究、開発。これに派生して、やはりそれまで不可能だった有機物由来の無機肥料製造技術や、土壌を人工的に創出する技術を開発。世界でも例を見ない技術であることから、「2012年農林水産研究成果10大トピックス」に選出された。
 

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