「部下の力を引き出せない上司」の残念な指示 「正解」を教えてしまうと逆に覚えない

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懇切丁寧に教えることが必ずしも良い結果につながりません(写真:xiangtao / PIXTA)
上司が部下へ熱心に指導すればするほど、育たない。『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』の著者、篠原信さんが新人上司の陥りやすいワナを指摘します。

部下のモチベーションを上げるな

マネジメントとは、部下のモチベーションを上げ続けることだと考えている人がいるかもしれない。しかし部下のモチベーションを上げようとする上司の働きかけは往々にして失敗に終わってしまう。

だから「答えを教える」よりも、「できるようになった快感」を強めることで部下の意欲を高めることが大切だ。でもどうやって? チンギス・ハーンで有名なモンゴル帝国で宰相を務めた耶律楚材という人物は、「一利を興すは一害を除くに如かず」という言葉を残している。よいものを1つ増やそうとするより、よくないものを1つ減らすほうがよほど効果的という意味だ。

「育てる」とは似て非なる言葉に「助長」というものがある。「助長」は、ある男が隣の畑と比べて自分の畑の苗の育ちが悪いのに腹を立て、一本一本の苗を引っ張り、「成長を助けてやったよ」と満足げだったのだが、翌日になると根が切れてすべての苗が枯れてしまった、という逸話から来ている。

上司の中には、「『できない』を『できる』に変える瞬間を部下に味わわせてやればいいんだな、よしそれを手伝ってやろう」と張り切ってしまう人がいる。特に、上司になったばかりの「新人上司」にその失敗が多い。「助長」になりやすいのだ。

上司から「ああすればうまくいくよ、こういう場合はこうすればいいよ」と親切にアドバイスすると、部下はつまらなくなる。自分が創意工夫する余地を奪われてしまうからだ。自分の仕事が自分のものではないように感じられ、「やらされている感」が強まる。やがて、上司から命じられるままに動く「指示待ち人間」になってしまう。

上司からすると「俺ってなんて熱心に指導する上司なんだろう」と自己満足が始まっているかもしれないが、熱心なあまりに「助長」し、部下の意欲の「根」を切ってしまっている。つまり、部下のモチベーションを上げてやろうと上司が働きかけると、部下のテンションは逆に下がる。部下の意欲をかき立てるには、よけいなことをするよりはよけいなことを減らすほうがよほどよい。まさに「一利を興すは一害を除くに如かず」だ。

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