習主席、ダボスで「中国市場は開かれている」 海外企業に根強い不信感

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 1月18日、習近平・中国国家主席(写真)はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会で、中国経済は「広く開かれている」と強調した。17日撮影(2017年 ロイター/Ruben Sprich)

[北京/上海 18日 ロイター] - 習近平・中国国家主席はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会で、中国経済は「広く開かれている」と強調した。中国政府は外資規制を緩和する動きを見せるが、海外企業の不信感は根強く、中国側には一段の努力が求められている。

在中国の米国商工会議所が18日に公表した年次調査では、会員企業の8割超が外国企業が歓迎されていないと感じており、以前よりもその傾向が強まったと見ていることが浮き彫りになった。いわば当局の市場開放の本気度をほとんど信じていない状態だ。

同商工会議所のザリット会頭は、習主席の発言を評価し「いくらかでも市場が開放されることを願っている」と述べるものの、「これまでのところ、そうした動きは見られない」と懐疑的だ。

内閣に相当する中国国務院は17日、広範な金融サービス分野や通信やインターネット、文化、教育、輸送分野で外資に対する規制を緩和すると表明したが、逆に規制範囲の広さを印象付けた。

国務院はこのほか、外資系企業の中国の証券取引所への上場や、社債や転換社債などによる資金調達も許可することを表明。これに呼応して、国家発展改革委員会(発改委、NDRC)も18日、地方政府は製造業に海外資本を呼び込むための政策を優先することができるとの見解をインターネットのサイトで打ち出した。

同商工会議所の政策委員会のレスター・ロス委員長は「実際にもっと広範に市場を開放するつもりならば(中国当局の)すべきことは多い」と指摘。

在中の欧州連合(EU)商工会議所のブトケ会頭は、中国が市場開放を約束することを歓迎しつつも「市場開放の話は何年も前から聞いている」とし、企業が知りたいのは、それでどうなるかだ、と言う。中国とEUとが協議中の投資協定を決着させることが市場開放に対する本気さを示すことになると述べた。

国務院は規制緩和に関し、詳細な内容や時期の見通しは示していない。アナリストは、近い将来に株式市場にアクセスしやすくなることに懐疑的で、市場関係者からは「海外企業が上海や深センのA株市場に大々的に上場する可能性は低い」との声が上がる。

投資家のZhu Haifeng氏は、外資が先を争って中国に投資をするとはあまり思えないとし「海外企業が中国で上場するのは、中国経済が完全に持ち直し、人民元の下落が止まる時、つまり、今から2─3年は先のことだろう」と話す。

ある香港のファンドマネジャーは、中国当局からの市場開放や規制緩和の大合唱は「表面的には正しい方向の動き」だが、実際のところは、中国による不公正な貿易が米企業を害していると繰り返すトランプ次期米大統領の就任を目前に控えた、政治的な狙いが大きいと指摘。20日の大統領就任式で、中国を批判しないよう、あらかじめ釘を刺しているとの見方を示した。

(Michael Martina 記者、John Ruwitch記者)

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