マッキンゼーの何がすごいのか 社員1万7000人以上の最強ブレーン集団

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国境を超えた ワンファーム

バウワー氏の作り出した基礎の上に発展を遂げたマッキンゼーは、今では50カ国以上に約100の事務所を構える。世界には1万7000人以上の社員(うち9000人以上がコンサルタント)がいる。米『フォーブス』誌の調査によると、年間売上高は75億ドルで全米の非上場企業としては47番目の売り上げを誇る。

これだけの規模になっても、「ワンファーム」としての一体運営が維持されている。所属コンサルタントは国籍に関係なく、世界中のプロジェクトにかかわる。業種別(エネルギー、ヘルスケアなど)、機能別(コーポレートファイナンス、組織など)のグループに分かれ、グローバルレベルでのベストプラクティス共有に努めている。

コンサルタントをバックアップする仕組みも、マッキンゼーがほかのコンサルファームに先んじて作り上げたもの。ベテランになっても受け続けるきめ細かな研修プログラム、創業以来のリポートを蓄えたデータベース「PD(プラクティス・デベロップメント)」、独自の調査活動も行うシンクタンク「マッキンゼー・グローバル・インスティテュート」などがその代表だ。

マッキンゼーの影響力は「コンサル業界」という狭い枠にとどまるものではない。同社の特徴は、リーダーシップのある人材を育成し、その人材が政財界で幅広く活躍している点にある。「マッキンゼー・マフィア」との異名も持つ2万7000人にも及ぶアルムナイ(卒業生)のネットワークからは英国のウィリアム・ヘイグ外相、日本の茂木敏充・経済産業相のようなパワーエリートが輩出している。IBMを立て直し、2003~08年にカーライル・グループ会長を務めたルー・ガースナー氏も卒業生だ。

実はマッキンゼーのミッションには人材育成も盛り込まれている。第一のミッションは「顧客企業の成長」。具体的な目標としては、「顧客企業が筋肉質で強い競争力を備え、それが業績向上という目に見える成果を生み出し、さらには継続的な成長を具現化できるよう貢献すること」と定めている。

そして、第二のミッションとして定められているのが、ズバリ「人材の育成」だ。「マッキンゼー自体が優秀な人材を引き付け、その人材の持つ才能を最大限に引き出しながら、彼らを夢中にさせる組織であり続けること」を目指す。

ただし日本では逆風も吹いているようだ。ライバルであるBCGの関係者は「実はクライアントを口説く殺し文句がある」と明かす。

「日本ではBCGのほうが大きい。支社のトップも、BCGは日本人だがマッキンゼーは06年以降、日本人ではない」

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