23歳女性が「美容師の夢」を捨てISと戦う理由 「私はいつでも死ぬ覚悟ができています」

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それから6カ月後の2015年2月、私はトルコのイスタンブール経由で、イラク北部のクルド人自治区、エルビルの空港に到着した。ここには、アメリカ人のフォトジャーナリストの友人が考古学者やイギリス人の記者たちとシェアする1軒の家があり、最初の数日は私もここに泊まりながら、日本では報道されることのない細かい現地の情勢を収集することにした。

難民キャンプで出会った家族が語ったこと

それから4日後、私はヤズディの取材をするためにエルビルから車で3時間ほどのところに位置するドホークという都市へ向かった。ドホークにある難民キャンプでは、故郷を追われたヤズディが暮らしている。イラクへ出発する前に知り合いのドイツ人記者から信頼できる通訳として紹介されたハサンと、その弟のシフォックも、難民キャンプ周辺の民家を借りて、ハサンの妻、幼い2人の息子、両親、弟や妹など15人で避難生活を送っていた。私はこの日から 約1カ月間、その後もイラクを訪れる度に、この家を拠点に取材をすることになった。

ハサンの母親のバーフィさんと父親のアショールさんは、ダーシュに攻撃されたときのことを詳しく話してくれた。「8月3日の早朝、私はいつもと同じようにパンを焼いて朝食の準備をしていました。すると突然ハサンが『友達から電話があって、アメリカ軍の通訳として働いたことのあるヤズディがダーシュに真っ先に殺されているらしいんだ』と言ったのです」。

現在薬剤師として働くハサンも、歯科医のシフォックも、約10年前にイラクに駐留していたアメリカ軍の通訳として働いていたことがあった。そこで一家は8時半ごろ、ハサンが運転する常用車に家族12人で乗り込み、何とか村を脱出することができた。

現在、ヤズディの難民キャンプがあるドホーク近郊で避難生活を送るアショールさんとバーフィさん(写真:筆者)
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