便利すぎる日本がフランスから学ぶべきこと 「少しの不便さ」は「働きやすさ」の裏返しだ

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「配達が何時に来るかわからない」「再配達品を受け取るのもひと苦労」となれば、消費者にとって不便であることは確かだ。ただ、気長に待てば届くのだから、大きな支障はないとも言える。

同様のことは、業者に修理を依頼したときの対応にも言える。日本で修理を頼むと、「午後2時」と依頼すれば業者は2時ぴったりの時間に現れる。遅れるときには、「15分ほど遅れます」などと連絡がある。しかしフランスでは、そうはいかない。日本以上に水道の配管や暖房などの住宅設備がよく故障するにもかかわらず、である。

そもそも、修理に来てもらう時間は、「午前か午後」の大きな括りでしか選べなかった。それも、必ずしも当初の予定通りにいくとは限らない。あるとき、水道修理の業者が「午後に来る」ことになっていた。そこで私は、業者は昼食を済ませたのち、午後2時から4時ぐらいの間に来るのではないかと予想して待っていた。ところが4時半になっても業者は現れない。そこで受付窓口に電話すると、「前の工事が長引いたので、今日は来られない」との返事だった。早めに連絡して欲しいとは思うが、そういう事情ならば仕方ない。

「修理業者だって、週末は休みます」

『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

別の水道修理業者に来てもらった際、親切にも「何か問題があれば、ここに電話してください」と受付窓口の電話番号が書かれたカードを渡してくれたことがある。ただ彼は、「ただし、土日以外にね」とわざわざ付け加えた。思わず「土日に急に水漏れが起きたら、どうすればいいのですか」と尋ねたところ、業者は申し訳なさそうなそぶりも見せず、「水道の元栓を閉めればいいのですよ。修理業者も週末は休まなければなりませんからね」ときっぱり。フランスでは、「働く人が休むこと」は当然の権利なのだ、と思い知らされた。

フランス流の大ざっぱなサービスは、きめ細やかな日本のサービスに慣れた人からはさぞ不便なものに見えるだろう。ただ、それが当たり前の環境でしばらく生活してみると、「最終的に荷物を受け取ることさえできれば」「住宅設備がきちんと修理されるのならば」それで問題ない、と思えてくる。

大ざっぱなサービスは裏を返せば、その分働く人にとって無理なく働けるということでもある。しっかり休養を取り、生き生きと働ける職場を増やすために、日本の消費者も気を長く持って「待つ」ことに慣れる必要があるのではないか。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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