ミスド、値下げだけじゃない3つの巻き返し策 今後2年間で商品の25%を健康志向に転換

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一つ目は、前出の価格改定による「ブランド価値の修復」。これは戦略の大前提だ。ミスドが本格的に価格の見直しに動いたのは2008年以来のこと。だが、直近の1年間は毎月末の1週間「100円セール」を実施。以前はセールが2週間前後に及ぶこともあった。これで通常期間とセール期間に来店する顧客の間で不平等感が広がってしまったのだ。また顧客に配るクーポンもいつのまにか数十種類にのぼった。売り上げを底上げする武器のはずが、セールが半ば常態化していた。今回の価格改定で「不公平感をなくし、市場価格に近付けた」(宮島賢一専務)。

値下げ後の状況はどうか。当初会社側は、常連客や新規客などが増えることで、値下げ前より売り上げが増えると期待していた。実際には値下げの認知度が思ったより低く、常連客の戻りがもう一息という。ただそれでも「ブランド価値の修復」という目的は達成しつつある。

「テイクアウト専門店」に手ごたえ

二つ目は、テイクアウト(持ち帰り)専門店「Mister Donut to go」(ミスタードーナツ トゥゴー)の出店だ。横浜市の中心部から西に約20km、相鉄線沿線の三ツ境駅構内に昨年11月にオープンした「トゥゴー1号店」の三ツ境ライフショップはわずか約8坪。キッチンと呼ばれる調理施設は置かず、近隣店から商品を運ぶ。主に「家族などへの日常の簡単なギフト」「ママ友たちのお茶のお供に」などの目的買いを狙う。

トゥゴーでは通常店舗で販売するドーナツに加え、従来のポン・デ・リングの約3分の2の大きさにカラフルなチョコをコーティングした「カラフル・ポン・デ・Jr」の5個入りセット(税込み500円)など、同業態限定の商品を販売。新商品開発に当たっては女性が中心となりメニュー開発に当たり、何度も試食など試行錯誤を重ねた。ここまでの売れ行きは順調で、新業態を牽引しているのがこのアソートセットという。

新業態限定のアソートセット。売れ行きは好調だ(撮影:梅谷秀司)

トゥゴーは5年で200出店を目標にする。「大ターミナル駅を持つ鉄道関連企業からの引き合いも活発で、今後の多店舗展開にメドがついた」(宮島専務)。一方で課題もある。三ツ境駅のような郊外の住宅街に1号店を置いたのは、まさに「日常使い」をイメージしてのことだが、通常の店舗と比べ休日の売り上げが想定よりもやや少ない。今後、アソートセットの種類を増やすことなどを検討している。

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