ミスド、値下げだけじゃない3つの巻き返し策 今後2年間で商品の25%を健康志向に転換

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そして三つ目は顧客層や時代の変化にあわせた店舗再編だ。これが、ミスドの反撃が遅れた最も大きな原因だった。ミスドの既存店の課題は①全店、店で作っているドーナツを提供しているのに、その認知度が低い②ドーナツの売り上げが減少しているのに、ドーナツを作るキッチン設備が過剰のままで、小ロット生産に適応できていなかった③少子高齢化に対応した快適な店舗やメニューの開発が遅れていた、の3点にほぼ集約される。

同社はこれを一挙に解決するため、2014年から複数の店舗フォーマットを作るべく試行錯誤を重ねてきた。その答えは「ドーナツキッチンありの母店舗」と「ドーナツキッチンなし店舗」に整理し直し、複合的に出店することだった。現在多店舗展開に向け踏み出したところだが、いずれのタイプも好調だ。

「キッチンあり店」では店内調理をアピール

「ドーナツキッチンありの店」では、スタッフがキッチンでドーナツを手作りしている姿が店内からも店外からも見えるようにし、商品の陳列も一変させた。商品ではパスタやホットドックなどを拡充、一部に新型のコーヒーマシンも導入した。一連の施策で朝食から夕食、子どもからシニアまで幅広い層に対応できるようになった。近隣にある複数の「ドーナツキッチンなしの店」にドーナツを供給するため、キッチンの稼働率は格段に改善している。

テイクアウト専門店は鉄道系企業からの引き合いも多く、今後都心でもお目見えしそうだ(撮影:梅谷秀司)

一方、「ドーナツキッチンなしの店」は母店から配送距離30分以内をメドに配置される。キッチンなしなので、投資額は少なくて済む。また、ホットドックなどをつくるオーブンやパスタなどの調理施設は置いてあるため、過度にドーナツの売り上げに頼らずに済む。そのためやはり多様な顧客層を呼び込むことが可能になった。

さらに、ミスドは2月以降、油分を押さえた「新しいドーナツ」も3種類発売する予定だ。「今後2年間でスムージーなども含めた全商品の25%を、健康志向対応した商品に切り替えたい」(宮島専務)。

ミスドは1971年に大阪・箕面に1号店を出店したファストフードの老舗であり、「街の社交場を目指してつくられた」(同)。少子化で人口は減っていても、世帯数は増えている。ドーナツに一段と磨きをかけ、新しい時代の「街の社交場」になれるか。これから本領が問われる。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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