渋谷駅に「カレーメシ」の店が誕生したワケ 「どん兵衛」「ラ王」に次ぐ日清の新店舗

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また、東さんは「同じ場所でラ王のショップを展開していましたが、あの時はトッピングにぶ厚いチャーシューを用意しましたし、今回のカレーメシでも、さまざまなこだわりの食材を揃えています。私どもはショップの売上や利益を追求するのではなく、あくまで商品の新たな価値提供をする場所として運営をしています」と語る。

つまり、店舗単体での利益などではなく、山手線の渋谷駅ホームという毎日大勢の人々が目にする場所に店を構えているという点が重要なのだ。このため、東さんは「お陰様でカレーメシのショップは好評を頂き、行列の出来る店になりましたが、それでは一般的な飲食店チェーンのように、次は山手線の別の駅に出店するのかというと、それは考えにくいですね」という。

誰も手がけていないことにチャレンジを

今回お話を伺った東さん(左)、佐野さん(中央)、和田さん(右)(写真:筆者撮影)

商品の新たな価値をPRするというだけに、サービス精神も旺盛だ。佐野さんは「ラ王ショップでつけ麺をお出しした時は、価格は変えずに2玉の大盛り、3玉の特盛りというメニューも用意しました。当然、大盛り、特盛りは利益率が下がるわけですが、それでも構わないのです。つけ麺ならではのこういった楽しみ方もあるんだということを、お客様に体感して欲しいのです」と、ラ王ショップの際の工夫について語る。

そして「カレーメシについても、そういう風にお客様に楽しんで頂く機会を提供する、そして広告効果も高いということをトータルに勘案して出店しました」(佐野さん)という。ドリッパーを使うという一手間かけた食べ方を楽しめるショップの存在は、日ごろ直接ユーザーに食べ方を提案する機会の少ないインスタント食品の新たな味わいを知ってもらうための、一種のコミュニケーションのスペースともいえるだろう。

渋谷駅の新たな名物として人気を集めているDRIP CURRYMESHI TOKYO。手短に利益を上げることにとらわれず、まだ誰も手がけていないことにチャレンジすることがビジネスなのだと、お三方は異口同音に語ってくれた。それは誰からの指示で進めたことではない。きっとそれが社風なのだ、とも。そのようなマインドがあったからこそ、渋谷駅山手線ホームという場所に、一風変わった楽しいショップが生まれたのだろう。

池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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