電子レンジの仕組み、あなたは言えますか? 物事の仕組みや成り立ちが1冊でわかる

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“そもそも難しい言葉を学ぶ必要なんてないと言う人もいる──大事なのは、物事の仕組みや成り立ちを知ることであって、その呼び名を知ることではないというわけだ。私は、必ずしもそうではないと思う。物事についてほんとうに学ぶためには、ほかの人たちから助けてもらわないといけなくて、この人たちの言うことをほんとうに理解するためには、その人たちが使う言葉の意味を知らなければならない。

だが、物事の呼び名を説明する本はほかにたくさんある。この本は、物事の仕組みや成り立ちを説明する。”

物を温める電波箱、街を焼き払うマシン

イラストの比重が大きい本なので、二つだけページの引用も交えながらご紹介しよう。たとえば、食べ物を温める電波(拡大版)では、物を温める仕組みは次のように説明される。『水を作っている小さなつぶを電波がおして、つぶのスピードをあげる。何かのなかにある小さなつぶのスピードが上がると、それは温かくなる。水の中に十分な量の電波を送ると、水は熱くなる』。"小さなつぶ"とは専門的な言い方をすれば分子のことだが、物事の理屈を把握するだけならこれで十分といえる。

『ホワット・イズ・ディス? むずかしいことをシンプルに言ってみた』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

太陽のような極端に大きいものから細胞のように極端に小さなもの、果ては国の法律や計量単位のように形のないものまで縦横無尽に仕組みを解説していく本書だが、中でも「核爆弾」について解説したページは平易なテキストだからこその恐ろしさも伝わり、強く印象に残った。『いま私たちはそれほど心配しておらず、ほとんどの人が、戦争が起こるとは思っていない。しかし、私たちはまだこのマシンを持っている。』街を焼き払うマシン(PDF)

どのページもそれぞれ表現とイラストの工夫が凝縮されており、ぱらぱらとめくっていくだけでやたらと楽しい。↑で例にあげたもの以外だと、上下移動ルーム(エレベータ)の仕組みは食い入るように読んでしまった。毎日使っていたり目にしているのに(ある意味では細胞や太陽もそうだろう)仕組みを知らないものって、本当に多いんだなあと実感させられる。見過ごしがちな物事の仕組みや成り立ちをあらためて知ることで、世界をより鮮明に理解できるようになるだろう。

おわりに

何度読み返しても新たな発見がある本は家の目立つところにおいておきたくなるものだけれども、本書はそんな特別な一冊だ。大きいので物理書籍を本屋で買うと持って帰るのが大変だったりするが(家に届いた時予想外に大きくて誰かの嫌がらせかと思った)、できれば紙でばばーん! と広げて楽しんでもらいたい。子どもでも読めて(翻訳には小学6年生までに習う漢字だけを用いている)100を超える大人まで楽しめる、レンジの広い本なので贈り物にも最適である。

※画像提供:早川書房

冬木 糸一 HONZ

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1989年生。フィクション、ノンフィクション何でもありのブログ「基本読書」運営中。 根っからのSF好きで雑誌のSFマガジンとSFマガジンcakes版」でreviewを書いています。

 

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