大企業の若手有志がめざす企業革新の熱気

「One JAPAN」の挑戦とは?

One JAPAN特有の「熱」が会場には満ちていた(写真:One Japan)

大企業の若手が集まり、組織の壁を乗り越えて交流することで、それぞれが所属する企業や産業をよりイノベーティブに変革する運動が始まっています。日本を代表する大企業40社の若手有志による団体「One JAPAN」。本稿ではその取り組みを概観します。

One JAPAN とは?

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クリスマス商戦で慌ただしい土曜日の午後、恵比寿のイベントホールが20代後半から30代を中心とする若手ビジネスパーソンでいっぱいになりました。強い意気込みを持った参加者が集まり、ホールはオープニング前から学園祭のような熱気と一体感に包まれていました。

このイベントは、One JAPANが開催。最近、大企業の中で、若手が社内横断型の交流組織を作ったり、有志で新事業に取り組んだりする動きが出ていますが、そのような有志団体が集まった組織です。この日は、日本を代表する40社の大企業の若手が総勢250人参加。部門では、経営企画が2割、研究開発部門が2割、営業部門が2割を占め、SE、広報、デザイン、人事、経理の担当もいます。

2016年9月に設立されたOne JAPANは、各社の有志団体の連携によって、新事業の開発や、新しいワークスタイルを提案・実践し、広く世の中に発信しています。個人で参加する異業種交流会とは異なり、実際に社内で活動をする団体が集まることにより、社外交流で得た成果を持ち帰る際のインパクトが大きく、会社を跨いで連携する際にもより大きな事業ができるという仕組みです。

設立時の参加者は、パナソニック、富士ゼロックス、NTT東日本、NTT西日本、トヨタ自動車、本田技研工業、富士重工業、アイシン精機、リコー、JR東日本、日本郵便、三菱重工業、川崎重工業、日揮、朝日新聞社、旭硝子、ベネッセ、日本取引所グループ、富士通などの若手グループで、第2回となる今回の集まりでは、三越伊勢丹、NHK、日本IBM、マッキャンエリクソングループなど15社の有志団体が正式参加を表明しています。

One JAPAN代表の濱松誠氏(写真:One Japan)

代表の濱松誠氏は、パナソニックのコーポレート戦略本社人材戦略部に在籍し、主に採用戦略や人材開発を担当しつつ、2012年に「One Panasonic」という若手有志の社内団体を設立し、活動中。また、パナソニックとして初めて資本関係のない外部ベンチャーに出向し、越境型人材開発プログラムの立ち上げをしています。濱松氏は語ります。

「目標は、多様な人材が一つにつながり、一人ひとり、一つひとつの団体が実践することで、日本を良くする、日本から世界を、社会を良くすることです。圧倒的な当事者意識を持って、トップやミドルマネジメント層、社外の方々と連携しながら、若手からの大企業変革に挑戦したいと思います。烏合の衆でなく、愚痴の言い合いでなく、実際に動くことで世の中を変えたいのです。空気を読むのでなく、空気を作りたいと思います」

同じく共同創設メンバーのNTT東日本の山本将裕氏はNTTグループの若手を中心とする社内組織の横串活動「O-Den」を実施中。「NTTだけで集まっても、なかなか得られないものが社外にあります。メーカーと組むならメーカーの人に聞くのが一番。学生まではインカレサークルや学生団体など学校を跨いだ団体があったのに、社会人になったとたんに無くなる。社会人の方が知識、経験、おカネなどがあり、集まった方が絶対に大きな力になるのに。One JAPANをきっかけに世の中が変わるようなサービスが生まれる。働き方が変わる。大企業のオープンイノベーションの新しいカタチをつくります」。

社外との繋がりが会社の革新には不可欠

イベントで基調講演をした早稲田大学ビジネススクールの入山章栄・准教授はOne JAPANの活動は今の日本の大企業を変革するための鍵となると言います。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄・准教授(写真:One Japan)

「イノベーションの本質は、既存の知と知の組み合わせ。日本企業の場合は、長年、自社内や近いところの知の組み合わせはやってきたので、自社から遠くの知を幅広く探すことが重要です。また、組織の活性化にはダイバーシティが必要ですが、多様な人材を集めるとともに、個人の能力でも “イントラパーソナル・ダイバーシティ” すなわち、多面的な活動で能力を高めることが大事。活動の軸を2本持つことで、情報を収集・コントロールしやすくなる。組織を活かす人材が育つのです」

基調講演に続いて、新規参加グループの取り組みに関するプレゼン。その後、会社を跨いで連携することで大きなソーシャルインパクトを目指す社会的事業や、各社に眠る技術を持ち寄ってのハッカソンなど具体的な事業連携の呼び掛けがありました。プレゼンが終わった後は、グループに分かれてのディスカッション。テーマは「有志活動を活性化するには?」。参加者はそれぞれの取り組みでうまくいっていることやクリアすべき課題を熱く語り合い、軽食を交えた懇親会でもその熱量は続いていました。

イベントに参加した若手と話して感じたことは、動きが遅いとか保守的であるとか言われている日本の大企業にボトムアップで新しい芽が出始めているということです。社内で有志団体を作り外部と交流しつつ、主体的に会社を良くしようという行動は、会社を思う気持ちから出ています。また、会社という組織を通じて社会を良くしようという使命感も強く感じました。

このような若手の動きを会社側が十分に活かすことができるかどうかが、経営陣や中堅幹部に問われていると思います。若手の新しい取り組みに寛容で、支援ができるか。若手の主張する新しい働き方を取り入れることができるか。

また、参加者の多くは新規事業開発に取り組んでいますが、大企業での思い切った新規事業開発の動きを定着させることができるかどうかも問われています。これは、若手の取り組みに限らず、現在、大企業各社で急速に拡大している新事業開発部門やコーポレート・ベンチャー・キャピタルの取り組みに通じる課題です。

過去、日本の大企業の新規事業開発は、景気が良くなって資金的に余裕ができると新しい部署が作られ、景気が悪くなると経費節減で真っ先に人員・予算を削減される憂き目にあってきました。これは、既存の主力事業と比べて、成功確率が低いことや時間がかかること、しかも当初の市場規模が小さいことが原因で、短期的な収益を目指すマネジメントがこれを削減するのは当然のこと。

しかし、中長期的に会社がイノベーティブであり続け、収益を上げ続けるためには、まったく異なる仕組みを意識して構築することが求められます。新規事業開発と既存の主力事業のマネジメントを分けること。意思決定プロセス、事業評価や人事評価の基準を分けることが必要です。資金の投入については、事業ポートフォリオを検討し、成功確率や回収期間を別基準とする戦略投資枠を作るべきです。人材についても、既存事業と新事業をバランスさせるキャリアパスや、ベンチャーや他の団体への出向や兼業・副業の許容などが必要と考えられます。

経済産業省でも、「イノベーション100委員会」で経営トップによる会社を革新する運動の環境整備をしており、今年度も参加企業を募集しています。One JAPANの若手の動きが、イノベーション100委員会をはじめとするトップダウンの革新運動と連動することができれば、経済を一段と活性化させる大きな潮流になると思っています。

次回は4月中旬に開催

One JAPANの共同創設メンバーの大川陽介氏(富士ゼロックス)は、ベンチャー企業と共同で開発したコミュニケーションロボット「ROX」の価値検証活動(共育プロジェクト)について、今回のイベントで連携を呼びかけました。

「ピッチで3分間、ROXコンセプトの実現に向けたプロジェクトの志を語りました。ただそれだけで、いろんな人がすぐ話しかけてくれました。企画/コンテンツのストーリーづくりから、AIの活用、サービスや販路の連携などで「共育しよう!」と握手を交わし、ユーザー視点での提案もいくつもいただきました。知と知の組み合わせにOne JAPAN特有の「熱」が加わることで、化学反応を促進させ、オープンイノベーションの可能性がさらに高まると期待しています。今後は、コンセプトの実現を目指し、具体的な活動に会社やユーザーを巻き込みながらアクションと学びを繰り返していきます」

今回のイベントに初参加した山上円佳さん(日本IBM)は語ります。
「今回、初めてOne JAPANに参加して、私達ミレニアル世代はイノベーションを起こすことこそがアイデンティティになるのだと確信しました。これからの時代はコラボレーションが肝。他企業・他団体とコラボして新規事業に取り組み、このアイデンティティを次世代に継承したいです。」

One JAPANプロジェクトは、仲間を巻き込みながら続いていきます。次回のイベント開催は4月15日の予定。その間も日々、イノベーション創出や新しいワークスタイルの推進、メディアとしての発信の活動や交流はスケールアップします。この動きをきっかけに、日本全体で企業の革新やオープンイノベーションの運動がますます拡大することを期待しますし、応援していきたいと考えています。

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