テレビの音楽番組はどこへ向かえばよいのか 音楽番組の"今"を探る

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2016年12月31日に行われたNHK紅白歌合戦。勝った紅組司会の有村架純(中央)は笑顔で優勝旗を手にした (写真:日刊スポーツ新聞社)
CD市場の縮小と配信ビジネスの定着後も、世の中に音楽を提供する側はいまだその変化に対応できていないように見える。40余年にわたって音楽業界を見つめ続けてきた筆者は、この現状をどう見るのか。

漁場が変われば釣れなくなるのは当たり前

当記事は『GALAC 2月号』からの転載記事です。(上の雑誌画像をクリックするとブックウォーカーのサイトにジャンプします)

CDが売れない、と言われて久しいが、CDが売れないのではなく、CDを売る努力が足りないのだ、と私は思っている。

なぜなら、実は2002年以降、音楽業界は迷走の時代に入ってしまった。メガヒットの時代が去り、新たに音楽配信の時代を迎えようとするなかで、進むべき道が見えなくなってしまったのだ。

もちろん、毎年ヒット曲は生まれ続けた。ピークには年間で23作品(95年、96年)、アルバムが30作品(99年)のミリオン・セラーが生まれた。だが、シングルは2001年に4作品に減り、2002年には浜崎あゆみの「H」のわずか1作、2003年もSMAPの「世界に一つだけの花」だけ、そして2004年はついにミリオン・セラーがゼロになってしまった。

なぜミリオン・セラーが減ってしまったのか? 音楽配信、違法コピーなどさまざまな要因は考えられるが、要はCDの購買層が変わりつつあるということだ。

魅力的な才能は次々と出てきている。しかし、音楽市場そのものの縮小傾向は止まらない。6000億円あった音楽業界の総売上額も3000億円にまで減少してしまい、まさに青息吐息といった惨状だ。業界の誰と会っても「CDが売れない」という話でもちきり。いつも最後には「何で売れないんだろう」ということを論じる羽目になる。そんなとき、私はあえて「売れなくて当然ですよ」と言う。

当然ながら相手は怪訝な顔をする。そこで私はすかさず説明するのだ。「漁場が変わってしまったんですよ」と。

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