「教育困難校」生徒が奨学金地獄に陥る仕組み スマホ中毒で非現実的な夢しか考えられない
「教育困難校」という言葉をご存じだろうか。さまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことだ。
大学受験は社会の関心を集めるものの、高校受験は、人生にとっての意味の大きさに反して、あまり注目されていない。しかし、この高校受験こそ、実は人生前半の最大の分岐点という意味を持つものである。
高校という学校段階は、子どもの学力や、家庭環境などの「格差」が改善される場ではなく、加速される場になってしまっているというのが現実だ。本連載では、「教育困難校」の実態について、現場での経験を踏まえ、お伝えしていく。
「アニメだけ見る仕事ってない?」
次の会話は、「教育困難校」における、ある日の進路指導室でなされたものである。
「先生、俺、将来何をやればいい?」
「何言ってんの。人に決めてもらうつもりなの?自分の人生なのに」
「何やっていいかわかんないよ。まだ、就職したくないから、とりあえず進学とは思っているんだけどさ……」
「好きなこと、興味のあることを考えてみることから始めてごらん」
「う~ん、好きなことはゲームかな。ゲームをやって食べていける仕事ならやりたい!」
「あることはあるけど、それでずっと食べていけるのは、ごくごく限られた人だけだよ。ほかに好きなことは何?」
「あとは、アニメかなあ。そうだ、アニメを見るだけって仕事ない?」
冗談のように思えるだろうが、この生徒は本気で聞いている。確かに将来の方針を決めづらい時代ではあるが、これまでの人生で自分で何かを決定した経験の少ない生徒たちは、何とか周囲の人に頼ろうとする。教師が相談されるのは、彼らから信頼されている証しともいえるのだ。
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