一世を風靡した「堂島ロール」の深すぎる苦悩 ギフト市場開拓には第2の柱が不可欠だが・・・

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モンシェールも手をこまぬいていたわけではない。同社の店舗では堂島ロール以外の洋生菓子を積極的に販売。さらに百貨店カタログへの掲載など、ギフト商品への展開も強化している。

大手百貨店のギフトカタログにはクッキーなどの干菓子やフィナンシェなどの半生菓子が並ぶ。自社のオンラインショップサイトでも、堂島ロールこそ取り扱っていないものの、冷凍ロールケーキやアイスの品揃えも増やしている。

頓挫した大型工場計画

期間限定の催事出店なども積極的に行なっている(記者撮影)

かつて、2010年12月に兵庫県から尼崎市臨海部の分譲地を取得。兵庫県企業庁の発表資料によると従業員数150人、延床面積2500平方メートル、投資額7億円で、2011年10月に新工場の操業を開始を計画していた。

当時の日本経済新聞や神戸新聞の報道によると、堂島ロール以外に、クッキーなど日持ちする焼き菓子系商品の強化を図ろうとしていたようだ。

しかし、堂島ロールのイメージが強すぎたせいで、ほかの洋菓子商品では新鮮味を十分に打ち出せなかった。同じく神戸新聞によれば東日本大震災の影響もあり、工場の建設計画を断念。金属加工の会社に土地を譲渡している。

「結局ロールケーキに頼ってしまい、タイミングを失してしまった。同じようにロールケーキで注目されながら、兵庫県三田市に店舗を絞り、チョコレートなどに展開しつつ、ブランド力を強固にしていった『パティシエ エス コヤマ』のような店もある」(前述の菓子業界関係者)。

体力的に厳しい中、2013年あたりからギフト商品拡充に再チャレンジし、少しずつだが効果は出始めている。百貨店のギフトカタログに載れば、お中元やお歳暮はもちろん、通常期にもまとまった売り上げにつながる。百貨店のグループ化が進む中、系列店にも商機が広がる。計画的に生産でき、ボリュームの大きいギフト商品は魅力的といえる。

ただ、ギフト商品は店舗販売のように人件費はかからないが、カタログ掲載への協賛金、お中元やお歳暮では早く注文してもらった場合の早割り、あるいはカード会員向けの会員割りなどもある。

「ギフトカタログの土俵に上がるのは、いずれ名だたる強豪揃い。長年の実績を積み上げ、定番商品を有する横綱、大関はどっかと構えている。しかも、虎視眈々と狙っている実力者はあまた存在し、ニューカマーは引きもきらない。魅力ある商品、実力のある商品を出さなければ、すぐに土俵から降りてもらうことになる」(流通関係者)

同社の金美花社長は雑誌「経済界」の対談で「焼き菓子でもモンシェールの顔となる商品を」と話している。堂島ロールという一本足からの脱却は果たすことができるのか。モンシェールは正念場を迎えている。

山本 雅則 東洋経済 記者
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