ミヤネ屋のASKA「未発表曲」無断公開は合法か 著作権法には反しない?

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はたして、未発表の作品を作者に無断で発表することは法的に問題ないのか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

著作者人格権の侵害になる

「自分の未発表の著作物を公表するかどうか、公表するとして、いつ、どのようなかたちで公表するかということは、著作者自身が決定することができます。これを『公表権』といいます。

公表権は、厳密にいえば『著作権』と異なる権利ですが、著作者が作品を作ったときに『著作権』と同時に発生する『著作者人格権』に含まれる重要な権利です。

ですので、ASKAさんに無断で、彼の未発表曲を放送することは、『著作者人格権』の侵害になり、著作権法違反となります」

番組によると、ASKA容疑者は、事前に井上氏に未発表曲を提供していた。このことによって、楽曲はすでに「公表」されていたことにはならないのだろうか。

「ここでいう『公表』とは、『公衆』に提供・提示することをいいます。著作者が、個人的に数人に提供して、意見や感想を求めるような場合は、『公表』にはあたりません。

ですので、この楽曲がすでに『公表』されていたということにはなりません」

一方で、放送局は、JASRAC(日本音楽著作権協会)から包括的な利用許諾を受けていて、JASRACが管理する楽曲を自由に使用することができる。それでも、今回の放送での使用は、著作権法違反になってしまうのか。

「たしかに、放送局は、JASRACの管理楽曲の『著作権』については利用許諾を受けています。しかし、JASRACは『著作者人格権』(公表権)については関知していません。

ですので、無断で未発表曲を放送で使用することは、やはり『著作者人格権』の侵害になり、著作権法違反となってしまいます」

高木 啓成(たかき・ひろのり)弁護士
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。ミュージシャンやマンガ家の代理人などのエンターテイメント法務のほか、IT関係、男女関係などの法律問題を扱う。音楽事務所に所属し、作曲家、ロックドラマー、DJとして活動するほか、「hirock’n」名義でiTunes等にて自らの楽曲を音楽配信している。Twitterアカウント@hirock_n
事務所名:アクシアム法律事務所

 

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