「開成にできないことを!」渋谷教育学園の挑戦

渋谷教育学園 田村哲夫校長に聞く

日本にしかない「国際人」という言葉

――うーん……。わからないです。

給料が上がるからです。僻地手当という特別な給与が払われます。それくらい日本は欧米からしたら遠い。よくファーイースト、極東なんて言われますが、辺境の地と言ってもいい。だから日本人には意識的に国際的な教育をする必要があるのです。

そうした教育方針を掲げて、今年でようやく創立から30年を迎えます。渋谷教育学園には先進的な気風が根付いてきました。かつて米国の名門校に進学 した生徒たちの一部は、本校に戻ってきて先生になってくれる。そうするとまた海外大学へと挑戦してくる生徒たちが育っていく。いい循環が生まれています。

――幕張と渋谷の2校がありますが、両校の違いはあるのでしょうか。

渋谷は幕張よりも生徒数は少ないですね。ですが、両校とも国際的な生徒を育成しようとしている点は一緒です。違いは立地でしょう。幕張校ができる前は千葉の生徒は私立進学校に行こうとすると、開成や麻布など都内に行っていた。でも、本校ができたことで、千葉のトップ生は幕張校を選ぶようになりました。さらに最近は、静岡や群馬から幕張校まで通う生徒もいます。

今や千葉も神奈川も東京もあまり関係ないでしょうね。学校選びは「首都圏」というくくりでする時代です。

――それでは、都立一貫校も競合になるわけですよね。

そうですね。ですが、現在のところ、あまり脅威には感じていません。中学、高校の6年間を通じて人間を育てるというのは、そう簡単なことではありません。本校に限らず、多くの私立で有形無形のノウハウを持っている。それはただ中学と高校をつなげたからといって、マネできるものではありません。

学費に関しても、そこまで高いとは思っていません。学費も学校を選ぶうえでのひとつの基準だとは思いますが、学費だけで学校を選ぶわけではありません。それに本校のカリキュラムや実際の取り組みからすれば、決して高い学費ではないでしょう。

50年先の教育を先取りしているという自負

――なるほど。早くから国際的な取り組みを行っていたんですね。では渋谷教育学園のDNAはどういうところにあるのでしょうか。

生徒個人が「未来に漕ぎ出す力」を備えているのが渋谷教育学園のDNAでしょう。かつての日本ように、いい大学にいって、ヒエラルキーの上位を目指せばいい時代は終わりました。大企業に勤めても安泰ではありません。極端な話、そもそも日本という国がどうなるかもわからない。個人的には、明治維新と同じような大変革が日本を襲っていると感じています。それも明治維新よりもはるかに速いスピードで。既存の価値観の多くが否定され、突如、現れた新たな価値観にとって代わられる。そういう時代です。ならば、明治以来、続けてきた教育のあり方だって見直されるべきでしょうね。

そういう時代に、どういう航路をとればよいのか。“メイドイン渋谷教育学園”の生徒たちはそれを直感的に感じていますし、私たちも新たな時代に対応できるような授業をします。だから東大に合格してもそれを蹴って米国大学へ進む。彼らにとってはごく当たり前の行動になりつつあるのかもしれません。

――逆に何か課題はありますか?

もちろん、学校として今やっていることの精度や内容を上げていくということは必要だと思います。ですが、やろうとしている方向性は間違っていない、課題という課題は、特にないと思います。今まで申し上げたような「渋谷教育学園“らしさ”」はあと50~60年は通用すると思います。それくらい時代を先取りして教育している自負がありますから。

(撮影:今井 康一)

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